アウトドアでもホテル並み 充実するグランピング施設
2021.04.12
テントの設営や食事の準備をする必要がなく、手ぶらでキャンプ気分を味わえる「グランピング」施設が増えている。
グランピングは「グラマラス(魅惑的な)」と「キャンピング」を掛け合わせた造語。アウトドアで豊かな自然を気軽に楽しみながら、豪華な設備や食事などのサービスも利用できるスタイルが受けている。宿泊施設も円形型大型ドームテントや独立型キャビンなどもあり、コロナ禍でも新設が続きそうだ。
増設計画
「日本一のモグラ駅」に無人駅グランピング施設―。上越線のトンネル内にある群馬県・土合駅下りホームは、上りホームにある駅舎から標高差約70㍍、486段もの階段を下る日本一のモグラ駅として知られる。かつての乗降人員は20人前後だったその駅舎内外を活用した「DOAI VILLAGE」がそれで、2020年11月にオープンした。
インスタントハウスと呼ばれる宿泊施設は現在、全4室で、厳冬期の雪の中でも宿泊可能。テント内の客室からは電車が見え、非日常感たっぷりだ。(写真:DOAI VILLAGEのHPから)
JR東日本高崎支社、同社の子会社でベンチャーへの出資や協業を推進するCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)のJR東日本スタートアップ(東京都)と、VILLAGE INC(静岡県)がオープンさせた。
VILLAGE INCはさまざまなキャンプ施設などを手がけており、JR東日本スタートアッププログラムの採択企業。「予約状況は、コロナ禍ながら満室の日もあり、好調とは言えないまでも、アウトドア環境での宿泊施設ということで、順調に営業を継続できている」(VILLAGE INC)という。
さらに、かつて利用されていた駅務室を改装した駅舎内喫茶をはじめ「宿泊者専用のサウナがあり、線路脇という駅直結ならではのロケーションで、本格的なサウナを楽しめる」という。
宿泊料金は2万5000円だが、「食事だけでなく滞在中のアルコールを含むフリードリンクが含まれている」(同)という。
今後のグランピング人気については「新型コロナウイルスの影響で、集中から分散、マスからパーソナルといった人の行動形態が変化すると見込まれる中で、密を避けつつ自然を体験することができるアウトドアの需要は増していく」(JR東日本スタートアップ)とみる。
このため「春ごろに4棟から8棟に増設の計画があるが、緊急事態宣言明けの状況もかんがみての判断になる」(同)という。
富士山の絶景
訪日外国人客の"蒸発"で「Go Toトラベル」再開に期待がかかるホテル業界。
藤田観光はコロナ以前からグランピング事業に参入、18年4月にアウトドア空間でホテルの快適性を楽しむことができるグランピング施設「藤乃シリーズ」として静岡県御殿場市に「藤乃煌(フジノキラメキ)富士御殿場」を開業。現在、「緊急事態宣言終了後の予約は徐々に動きだしている」という。
(藤乃煌 富士御殿場のFacebookから)
富士山の絶景が広がる中、独立型キャビン全19棟が並ぶ。開閉式屋根のアウトドアリビングの左右に、空調完備のベッドルームと、シャワーブースや洗面台、洗浄機能付きトイレ、インドアダイニングを配置。アウトドアテラスにはファイヤースペースやジャグジー、ハンモックなどが並ぶ。
夕食は満天の星の下、アウトドアデッキにダイニングテーブルを設営、キャンプ好きのシェフが作るアウトドア料理をコース仕立てで楽しめる。メイン料理のトマホークステーキを備え付けのガスオーブングリルで焼けば、キャンプ気分も楽しめる。朝食は地元産のソーセージや卵をシングルバーナーで焼いてホットサンドイッチを作る―といった具合。
同社は「藤乃シリーズ」に加え、オートキャンプ製品を中心にアウトドア製品の開発・製造・販売を展開するデンマークのノルディスクと業務提携、よりキャンプに近いテント型グランピング施設「ノルディスクヴィレッジ」も展開する。
18年9月には、長崎県五島市に「ノルディスクヴィレッジ ゴトウ アイランズ」を開業した。敷地面積約1500坪にテント8、スクールハウス4室を備える。
日本初の牧場グランピング
今後もグランピング施設の開業計画はめじろ押しだ。
グランピング施設の運営やプロデュース・集客を手掛けるブッキングリゾート(大阪市)は、4月27日、別府鉄輪パークマネジメント(大分県)が運営する、大分県別府市の鉄輪温泉地区にある鉄輪地獄地帯公園内に全棟天然温泉付きの全14棟のグランピング施設をオープンする。半円形型大型ドームテントを採用、客室内トイレ・温泉浴室・食事スペースを整備し、高温の温泉が湧き出る別府ならではの地獄窯・地獄蒸しを体験できる。
農業ビジネスを手掛けるザファーム(千葉県)は、千葉県香取市の広大な敷地にグランピングも楽しめる農園リゾート施設を運営する。コテージ、テントサイトのアウトドア宿泊も可能で、農業体験、カヌーツーリングを楽しむことができ、農園で収穫された新鮮な野菜や豪華食材を使ったバーベキューも可能。フランチャイズ展開も開始し今後、第1号としてマザー牧場(千葉県富津市)に、日本初という牧場グランピング施設をオープンする。
(Kyodo Weekly・政経週報 2021年3月22日掲載)
最新記事
-
お墓、どうされますか? 藤波匠 日本総合研究所調査部上席主任研究員 ...
出生数減少が止まりません。2015年には100万人以上あった出生数が、7年後の...
-
国産FSC認証広葉樹材を販売 堀内ウッドクラフト
日本森林管理協議会(東京都世田谷区、FSCジャパン)は、木工品製造販売の堀内ウ...
-
ウクライナ支援で一致 週間ニュースダイジェスト(4月16日~22日)
先進7カ国(G7)農相会合が宮崎市で、2日間の日程で開幕した(4月22日)。ウ...
-
「地域創生」五感で学ぶ 東京農大「食と農」の博物館が企画展
東京農業大学(江口文陽学長)の「食と農」の博物館(東京都世田谷区)は21日、企...
-
健康食品市場9000億円超へ 23年度、ストレス・睡眠・肥満対策で堅...
矢野経済研究所がこのほど発刊した市場調査資料「2023年版 健康食品の市場実態...
-
幸福は口福から 安武郁子 食育実践ジャーナリスト 連載「口福の源」
人間の最後まで残る欲の一つである「食欲」(※)。おいしさを味わう幸せ「口福」。...
-
漁師さんが「かわいい」と気付いた日 中川めぐみ ウオー代表取締役 ...
水産の世界は物理的な距離よりも、精神的な距離が遠い。水産業界以外の方と、こんな...
-
花粉症対策でスギの伐採加速 週間ニュースダイジェスト(4月9日~15...
政府は首相官邸で花粉症対策を議論する初の関係閣僚会議を開き、岸田文雄首相は6月...
-
リニューアル、地方進出活発に 動き出した自治体アンテナショップ 畠...
最近、自治体のアンテナショップの移転、リニューアル、新規出店が全国的に活発だ。...
-
生産拡大と持続可能性の両立を議論へ 週間ニュースダイジェスト(4月2...
気候変動やロシアのウクライナ侵攻で食料の安定供給が世界的な課題となる中、先進7...