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「持続可能なシーフード」を考えよう  海むしばむ温暖化、汚染  佐々木ひろこ フードジャーナリスト

2021.04.05

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「持続可能なシーフード」を考えよう  海むしばむ温暖化、汚染  佐々木ひろこ フードジャーナリストの写真

 現在76億人を数える世界の人口は、2050年には96億人に達すると試算されている。

 今後水や食料の不足が世界中で加速し、争奪戦になることが確実視されるなか、食料自給率が37%(カロリーベース)と極端に低い日本がどのような対策をとるべきか、という問題が提起されて久しい。

 なかでも、今もっとも必要性と緊急度が高いのが水産物にかかわる対策だろう。2019年の日本の総漁獲高は416万㌧と、ピークだった1984年(1282万㌧)の3分の1を切り込んでいて、水産王国としての名声はとっくの昔に過去のものとなっている。(写真:築地の市場=筆者撮影)

 これは長期間にわたって乱獲が続いたことを主要因に、最近の温暖化や海の汚染などがさらに海をむしばんだためで、どこの浜を訪れてみても「魚がいない」「小さい魚ばかり」という漁業者の悲痛な声が聞こえてくる。

 私がこの問題を初めて深く学んだのは、2016年のことだった。

 海の危機的な現状に驚いたことはもちろん、ジャーナリストとしてそれまでの知る努力が足りなかったことを深く反省した私は、仕事仲間だった東京の若手トップシェフたち約30人と、各店営業後の深夜に集まり勉強会をはじめた。

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(写真:シェフらを交えた勉強会が深夜まで続いた、筆者は前から2列目、左から2番目=2019年1月)

 意欲的なシェフたちの想いに支えられたこのネットワークの目的は、当初の「現状を学ぶ」から次第に「みんなと一緒に考えよう」に進化する。

 その後「Chefs for the Blue/シェフス フォー ザ ブルー」という一般社団法人に枠組みを整えてからは、欧米で一般的な「サステナブル(持続可能な)シーフード」の概念を普及させること、料理人として志のある漁業者とつながりサポートすること、魚食文化を未来につなぐことなどを活動のミッションに据えている。

 それ以来、ディナーイベントやトークセッション、地方自治体や企業との協働企画など、さまざまなプロジェクトを進めてきた。

疑問を自分で調べる


 私が一般向けのトークセッションに登壇すると、必ず聞かれるのが「消費者として海の問題にどう向き合えばいいでしょうか」という質問だ。

 それには私はいつも、次のように答えている。

 「目の前の魚が誰にどのように育てられて、もしくは獲られて、どうやってここまで来たのか、その道筋やストーリーを想像することを習慣にしてみてください。そうすればきっと、たくさんの気づきと疑問が生まれます。その疑問を自分なりに調べてみて、エコラベルでもそうでなくとも、海と食卓の未来につながると納得できたものを選び取ってください」

 気づけば海は、都会で生活する人間にとってずいぶん遠い存在になってしまった。

 これからそんな海と魚と食の話、そして私たちの活動についても少しずつご紹介したいと思う。


 佐々木 ひろこさん フードジャーナリスト、一般社団法人Chefs for the Blue(シェフス フォー ザ ブルー) 代表理事。日本で国際関係論を、米国でジャーナリズムと調理学を、香港で文化人類学を学び、現在はジャーナリストとして主に食文化やレストラン、料理をメインフィールドに執筆。ワールド・ガストロノミー・インスティテュート(WGI)諮問委員。2017年より東京のトップシェフたちとともにサステナブルシーフードの普及・啓発活動に取り組んでいる。

(Kyodo Weekly・政経週報 2021年3月22日号掲載)

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