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コロナ禍で考える会食文化  左方倫陽 共同通信デジタル編成部ニュースチーム次長

2021.03.01

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 懸念されていた新型コロナの冬季流行が、やはり起こった。

 今年に入って間もなく、2度目の緊急事態宣言を発令。東京では1日の新規感染者が2000人を超える日も出た。緊急事態宣言は、東京や大阪など10都府県で3月7日まで延長になった。

 今回の感染者増加の波を引き起こした主な原因は、「会食」「宴会」とされる。食事中の会話で飛散する唾液が、感染を拡大させるので、他人と会話するのは危険の拡散となる。政府は会食自粛を呼び掛けるが、そうもできないのが人情だろうか。

 守らなかった菅義偉首相、国会議員や芸能人らが次々にやり玉に挙げられ、会食はすっかり〝悪事〟の扱いの感がある。

 「黙食」の張り紙をする飲食店も出現した。ちなみに公衆浴場やサウナでは「黙浴」、バスでは「黙乗」の張り紙を見るという。

 コロナ禍以前は、独りや孤独に後ろめたさ、マイナスの評価が付きまとい、揶揄をこめて「おひとり様」と呼ばれた。孤独で寂しい食事を意味する「孤食」「ぼっち飯」なる語もある。

 しかし今や「ソロ外食」と言い換えられ、単独行動は「ソロ活」と勧められる。世間では人ごみを避け、自然野中に身をおく「ソロキャンプ」も静かなズームが続く。

親近感を強める


 だが人間には、複数で食事をしてきた長い歴史がある。その起源は、原始にさかのぼるだろう。共食には、互いの親近感を強める作用があり、冠婚葬祭や集団の儀式としても欠かせない。

 「『共食』の社会史」(原田信夫、藤原書店)は、人類史での会食文化の重要さとさまざまな展開を説明して、「われわれの心のなかに、絆を深めたいと思う人間との深い共食願望がある」と指摘する。コロナ禍とは、この自らの深い願望との戦いともいえそうだ。

 SF作家が「人類滅亡の原因」を空想してみるというテレビ番組では、未知のウイルス感染を挙げ、五感とりわけ視覚でとらえられない点を指摘した。

 「人類は目で見えないものに油断しがち。一瞬の油断で感染する恐怖がある」と。

 仮想現実(VR)などの視覚のテクノロジーの進化で、ウイルスを視覚化するゴーグルが開発できないものかと思ったが、見えるとかえってパニックになるかもしれない。

 そこで、除菌に有効だが人体に無害という紫外線の照射機器が普及すれば、見えない敵の脅威が減りそうだ。

 最近、インターネットを介したオンライン飲み会に参加してみた。分割された画面に映る顔を犬や猫にしたり、背景を宇宙空間に設定したりできるので、数人がやると異次元の宴会となった。

(Kyodo Weekly・政経週報 2021年2月15日号掲載)

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