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シンポジウム「コロナ禍での食料安全保障を考える」開催  共同通信とJA全中

2021.02.19

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シンポジウム「コロナ禍での食料安全保障を考える」開催  共同通信とJA全中の写真

 株式会社共同通信社と全国農業協同組合中央会(JA全中)は19日、新型コロナウイルスの感染拡大が、食の安全・安心や国内生産・供給に与えている影響や今後の課題を議論するシンポジウム「コロナ禍での食料安全保障を考える~『国消国産』の重要性~」 をオンラインで開いた。

 冒頭で、主催者を代表しJA全中の中家徹会長があいさつし「新型コロナウイルスの影響で、国内の農業は幅広い品目で需要の減退や価格の下落がみられる」と指摘した上で、「JAグループは国民が必要とし消費する食料は自国で生産するという『国消国産』の考え方を提起している。食料安全保障をどのように確保していくか、各方面の皆さんと議論していきたい」と述べた。

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(写真:あいさつするJA全中の中家徹会長)

 続く討論は共同通信アグリラボの石井勇人所長が司会を務め、全国農協青年組織協議会の柿嶌洋一副会長、株式会社シグマクシスの田中宏隆ディレクター、農林中金総合研究所の平澤明彦基礎研究部長、農林水産省の久納寛子食料安全保障室長の4人が、それぞれ現状を分析した上で、食料安全保障の課題などについて考えを述べた。
(写真上:手前から久納氏、平澤氏、田中氏、柿嶌氏、石井氏)

 久納氏は農林水産省の取り組みを説明。「国のレベルで、食料供給に大きな混乱がなかったとしても、生活者にっては、店頭に食品があるのか、ないのかが大きな問題だ」と述べ、「コロナ禍で家庭で食事をすることの価値が見直され、チャンスもある」と、「生活者の視点」を強調した。

 柿嶌氏は「消費者に喜んでもらえるよう生産に取り組んでいる」と述べ、高品質なのに規格外で販売しにくい大豆を、みそやしょうゆの原料として利用してもらうなど生産現場の実例を紹介した。

 田中氏は「テクノロジーは生産性を向上する武器」だとして「フードテック」の可能性を分かりやすく説明。「食」は幅広い分野と関わっており、食品ロス、タンパク源の確保、正しい食事、フードデザート(食料品が入手困難なこと、またそうした地域)など「食がもたらす社会的課題の解決を急ぐ必要がある」と指摘した。

 平澤氏は、コロナ禍による食料への影響について「日本ではかろうじてパニックを回避できているが、(食料生産から消費までの)『フードチェーン』の機能は低下しており、労働者や物流の確保、消費者の購買力の低下など、さまざな問題が同時多発的に起きている」と述べ、欧米、途上国など海外の事情を紹介した上で「警戒が必要だ」と注意を喚起した。

 オンライン視聴者や記者からは「日本が輸入すると相手国から食料を奪うことになるのではないか」「フードロスの対策は」「食料の量の確保だけでなく価格への影響は」など多くの質問が出て、活発に意見交換した。

 討論を通じて、生産だけでなくフードチェーン全体として捉えていくことが、国産食材の活用や、ひいては食料安全保障の確立につながることが確認された。

 また、フードチェーンの「つながり方」は、デジタル技術の進歩や価値観の多様化で再編期を迎えており、コロナ禍でさらに変化が加速度的に進んでおり、一方的な情報伝達ではなく、双方向、多角的なコミュニケーションが重要だという認識も共有された。


 この日のシンポジウムは神奈川政経懇話会、埼玉政経懇話会、千葉政経懇話会、共同通信社きさらぎ会が共催。埼玉新聞社、千葉日報社、東京新聞、神奈川新聞社、中日新聞、産経新聞社が後援した。

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