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豪産牛肉輸出、日本向け首位に  20年、輸出全体は4年ぶり低水準  NNAオーストラリア

2021.01.15

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豪産牛肉輸出、日本向け首位に  20年、輸出全体は4年ぶり低水準  NNAオーストラリアの写真

 オーストラリアの2020年の牛肉輸出量が1039410㌧、前年比15.4%(約19万㌧)減と、大きく減少したことが農業省が発表した貿易統計で判明した。南部の季節的条件の改善による牛群の再建と、解体数の減少による供給減を背景に、16年以来4年ぶりの低水準となった。

 米国など一部の輸出市場における価格競争力の低下と、1819年の大干ばつによる子牛の出生率の低下も影響した。輸出相手国は緊張が高まる中国に代わり、日本が第1位となった。

 オーストラリアの牛肉輸出は過去10年間、干ばつ時のキャッシュフロー(現金など流動的な資金)の確保を目的とした牛の解体の進行とその後の再建を繰り返す不安定な状況が続き、20年の輸出量は直近5年の平均である108万㌧も下回った。

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(グラフ:横軸は年、データはオーストラリア食肉家畜生産者事業団)

 昨年の牛肉生産は年の前後半で様相が異なり、前半(1〜6月)は比較的順調で、生産量は前年比3%減にとどまった。だが後半には十分な降雨があったことから牛群再構築が本格化し、解体処理が著しく減少、牛肉の供給不足が表面化した。

米国向けは30年間で最低水準


 緊張が続く中国向けの輸出が減少したことから、日本が再びオーストラリア産牛肉の最大の輸出相手国となった。日本向け輸出量は冷蔵・冷凍合わせて269302㌧で前年比1万8000㌧(6%)減だった。牛肉輸出量のうち、46%が冷蔵肉で、1〜11月の日本向け加工用牛肉輸出量は前年同期比で4%増となっていた。

 米国向け輸出は不振で、昨年の輸出量は前年比4万㌧(16%)減の211754㌧と、過去30年間で最低の水準まで落ち込んだ。この背景には、輸出の主力となるひき肉「90CL」の米国での価格競争力が急激に失われたことがある。

 値動きは激しく、年初の価格(米ドル基準)は14年9月に記録したこれまでの最高を超えた高水準で推移。だが6月頃から下落が始まり、10月には1㌔当たり6.3豪㌦(1豪㌦=約80円)と19年1月以降の最低に落ち込んだ。

 11月にはバイヤーの関心が増えているとの指摘があったものの、供給は依然として少なかった。11月の米国向け牛肉輸出量は、前年同月比30%減の9600㌧と、11年1月以降の最低量を記録した。

中国のシェアは3位に


 中国向け輸出は、貿易紛争が大きく影響した。19年には約30万㌧と最大の輸出先だった中国だが、20年の輸出量は196696㌧35%もの減少をみせた。牛肉総輸出量における中国市場の割合も、25%から18.9%にまで減少し、国別輸出量では第3位に下落した。

 中国は国内の牛肉需要充足のため、中南米諸国からの輸入を増やした。中南米の輸出価格は、オーストラリアを下回るといわれ、結果として南米には中国向け輸出が牛肉輸出全体の5070%を占めるまでになった国があるとみられる。

 オーストラリアにとって日本と並び堅実な輸出市場となっているのが韓国だ。20年の韓国向け輸出量は前年比1.5%減とほぼ変わらない16850㌧、国別で第4位だった。

 牛肉消費量の65%を輸入に頼る韓国市場では、オーストラリア産が最も価値の高い(ハイバリュー)牛肉とされ、韓国オーストラリア自由貿易協定(KAFTA)のセーフガート発動となる約17万㌧ぎりぎりまで輸出された。

 オーストラリア産牛肉の4大輸出市場(日本、米国、中国、韓国)の占める割合は、前年の81.5%から80%とわずかに減少した。

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 (グラフ:▲はマイナス、データはオーストラリア食肉家畜生産者事業団)


 小規模市場でも、オーストラリア国内の生産の減少の影響が出た。

 インドネシア向け輸出は主に冷凍肉となる4万7733㌧で、前年の5万7637㌧から17%減少した。だがインドネシアは特徴的で、オーストラリアから牛内臓肉を3万4587㌧を輸入、韓国や日本を上回る最大の内臓肉市場だった。

 中東向けは6%減の2万9332㌧、台湾も12%減の2万4625㌧だった。欧州連合(EU)向けは過去10年以上で最低となる8525㌧と、前年の1万4000㌧から大きく減少した。

供給回復には時間も


 今後については、国内での生産量・供給量が急速に増加するとは考えにくく、輸出の回復は鈍いとみられる。オーストラリア食肉家畜生産者事業団(MLA)は昨年7月、21年の牛肉予想輸出量を1029000㌧と予想。20年の予想からわずか6000㌧しか増加しないと見込んでいた。MLAのその後の予想生産量は、例年通りの気象条件だった場合、22年が110万㌧、23年は120万㌧と徐々に増加するとの予想だ。

 干ばつでの解体処理が進行した19年の輸出量は、16年以降で最高となる123万㌧に達していた。

(オセアニア農業専門誌ウェルス(Wealth) 1月15日号から)


【ウェルス(Wealth)】 NNAオーストラリアが発行する週刊のオセアニア農業専門誌です。

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