コメ余りを考える 小視曽四郎 農政ジャーナリスト
2020.12.21
(写真はイメージ)
コメ余りが深刻化し、コメ農家の秋を暗くしている。政府は早々に来年の生産量をかつてない600万㌧台への引き下げを提言し、数万㌶の減反の必要を説いた。政府はこの3月に食料・農業・農村基本計画を改定し、麦、大豆などを輸入から国産に置き換え、食料自給率の目標を45%に決めた。
コメの生産調整は、第2次安倍内閣で2018年産から「民間主導」に移行。政府は作付け面積の提示をやめ、農業協同組合(JA)や地方自治体に委ねている。適正在庫、適正生産量の情報を提供し、各県がJAなどと相談し農家に作付けの「目安」を示し、需給を引き締めている。
作付けは県間の事前調整はなく、どれだけ作ろうがペナルティーはなしだ。どうなるかと思われたが、この2年は綱渡りで過ぎた。
ところが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大で外食や観光が極端に抑制され、巨大なインバウンド(訪日外国人客)需要もストップ。巣ごもりの家庭内需要こそ増えたが、コメ消費は落ちた。
農家にはとんだ災難だが、政府の計算では最低でも36万㌧、できれば40万㌧近くまで生産を減らしたい。しかし10㌃あたり500㌔の収量としても7万〜8万㌶に相当する。
だが、本当に嘆くばかりの話なのか。それより食料自給率を踏まえれば、コメの作付けを減らし、輸入に依存する他作物の国産拡大のチャンス到来と前向きに未来志向で考えるべきではないか。
食料についてはコロナ禍のマスクの海外依存の結果、奪い合いが起こり「食料でなくてよかった」「食料の海外依存は心配」と自給率の向上を求める声が高まったが、国民はコメさえあればいいわけではない。
パン、麺用の小麦や納豆、豆腐の大豆の輸入物には、残留農薬や遺伝子組み換えのリスクがあり、国産志向も根強く、基本計画では30年の目標を小麦の場合は18年目標の76万㌧から108万㌧に、大豆は21万㌧から34万㌧に引き上げた。
この水準で消費者需要に十分こたえられるかどうかは別として、減反田や耕作放棄地の利用で自給率向上が望まれる。
ただ、現場では「主食用米との収入を比べる」(関東地方の農家)、「経営規模が大きくなるとコメから大豆、麦とかに労力がなく変更しづらい」(東北地方のJJA担当者)ほか、機械化や栽培技術、備蓄倉庫など消費までの各段階に課題もある。
しかし11月、製粉最大手の日清製粉と全国農業協同組合連合会(JA全農)が提携、輸入麦から国産へのシフトを目指すことで合意した。無論、これには経費がかかる。だからこそ菅義偉首相がきっちり財政支援を打ち上げ、食料自給率向上への気概を示すべきだろう。
(Kyodo Weekly・政経週報 2020年12月7日号掲載)
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