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年越し迎えそば店が正念場  産地はイベントで需要喚起

2020.12.04

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年越し迎えそば店が正念場  産地はイベントで需要喚起の写真

(写真はイメージ)

 新型コロナウイルスの感染拡大が第3波に入り、飲食店に対して営業時間の短縮が要請される地域が広がるなど外食産業への影響が懸念される。特に零細な経営が多いそば店は、例年だと需要が盛り上がる年末を迎え、客足を回復できるのか正念場を迎えている。

 飲食店の支援事業である「Go To イート」について、適用の申請を見送るそば店も多い。「客層が比較的高齢で、小腹が空いてふらりと来店することが多く、予約サイトを経由する条件では使われない」(東京・東新橋の千歳庵)。夫婦で経営していて、廃業した仲間もいるという。「後継者がいないし自分たちが感染するのも怖いから」(同)。

 大手チェーン店の閉店も相次いでいる。「Go To イートは昼食500円、夕食1000円未満は対象外で大衆向けの店舗ほど厳しい」(東京都内のチェーン店)と、制度に不満を漏らす。

 影響はそば粉の原料となる玄そば(殻付きの実)の産地にも及んでいる。年間約70㌧を収穫する群馬県みなかみ町では、需要が急減した4~5月に玄そばの価格が前年の3分の1~4分の1に下落した。

 同町は需要を喚起するため、12月13日まで「新そば祭り」を開催している。600食分の原料を買い上げ、地元産のそばやキノコを使った天ぷらそば(税込み500円)として、「みなかみ水紀行館」など同町内の道の駅3カ所で提供するほか、町内のそば店(12店)を利用すると、特産品や宿泊券が当たる抽選に応募できる。

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 初日の11月14日には、県立利根実業高校食品文化コースの生徒に混じって鬼頭春二町長が、そば打ちを実演して会場を盛り上げた(写真)。新そば祭りを契機に、そば粉の調達を「一部の店で地元産に切り替える動きがある」(同町農林課)という。

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 そばは和食のイメージが強いが、自給率は20%程度。輸入のほとんどを中国産が占めている。玄そばの相場は、国産が下落する一方、中国産は天候不順やそばからの転作が進んだことで供給量が減り、前年と比べて約3割高の水準で推移しており、価格差が縮まっている。

 国内最大の産地である北海道では、JAそらちが外食チェーンやコンビニ向けの原料を輸入から道内産に切り替えるよう働き掛けており、コロナ禍をきっかけに、地産地消の好循環が生まれる可能性もある。

 ただ、中国産玄そばの相場高騰は一時的に終わる可能性もあり、品質、数量、価格面で国産が安定的に供給できる体制を整える必要がある。もちろん、需要を維持・拡大するためには、そば店の閉店に歯止めが掛かることが大前提だ。(共同通信アグリラボ所長 石井勇人)

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