産地と消費者の相互理解こそ重要 気象災害激甚化と持続可能な農業を議論
2020.10.29
農業経営者育成の専門教育機関である日本農業経営大学校(東京都港区、堀口健治校長)は29日、気象災害が激甚化する中で、持続可能な農業をどう実現するかについて農業関係者が意見交換するイベントを、東京・大手町で開いた。
登壇したのは、産官学の連携組織「気象ビジネス推進コンソーシアム」の越智正昭人材育成ワーキンググループ副座長、「旬八青果店」などを運営する株式会社アグリゲートの左今克憲代表取締役、コープデリ生活協同組合連合会の山内明子常務理事。この3人に、同校卒業後に就農した2人がオンラインで加わった。
越智氏はイベントの冒頭、「SDGsと農業・気象情報をどう生かすか」とのテーマで基調講演。討論では「気温の上昇、豪雨の増加といった事実はデータが裏付けている。こうした災いが都市などのぜい弱性と結び付いて"害"になり農業にも影響を与えているが、政府・自治体の政策や関係者の取り組みによってまだ対応できる段階にある」と指摘した。
左今氏は、アグリゲート社が「規格外」と判断され既存市場では流通していない青果などの農産物について、発掘して販売している例を挙げ「地方農業の活性化と、都市住民の"不本意な"食生活の向上という2つの課題を同時に、ビジネスの力で解決したいと思っている」と述べた。
山内氏は、コープデリが産直に取り組んできたことや、自然災害の被災地やコロナ禍で影響を受けた地域の農産物を食べて応援していることを説明した上で、「(消費者が)地域や農家を応援してあげるという上からの目線にならないように気を付けながら、生産者と消費者が理解し合ってつながる努力を継続したい」と話した。
オンライン参加の山崎勇仁さんは討論に先立ち、福岡県朝倉市での野菜生産が、2017年から4年連続で7月の豪雨被害に遭っている状況や、対応について説明した。
山崎さん同様に同校卒業後、山形県白鷹町で水稲や枝豆などを生産している小口晋介さんも、ことし7月末の豪雨で枝豆やメロンが大きな被害を受けたことや、今後の対策を発表した。
討論で2人は「消費者の方を向いて生産することを考えたことはなかった。産地から声を出し、消費者に訴えたい」と口を揃えた。
このイベントは、三菱地所や農林中央金庫などが構成する実行委員会が進める事業「大丸有×SDGs ACT5プロジェクト」の一環。この日は日本農業経営大学校を運営する一般社団法人アグリフューチャージャパンの合瀬宏毅代表理事副理事長が司会進行を務めた。
(写真は左から合瀬氏、越智氏、左今氏、山内氏)
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