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流通大手、水産エコラベル強化   持続可能な水産資源目指す

2020.06.15

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流通大手、水産エコラベル強化   持続可能な水産資源目指すの写真

 大手スーパーが「水産エコラベル」商品に力を入れている。水産エコラベルは水産資源の持続的利用や環境に配慮した漁業・養殖業を確認するための認証システムだ。漁業、養殖の生産段階認証、流通加工段階認証(CoC)がある。

 課題は消費者の意識とされる中、流通業界は水産エコラベルを表示した商品の取り扱いや、流通加工段階認証を取得し、持続可能な水産物「サステナブル・シーフード」の推進に取り組む。

 水産エコラベルが表示された商品は、FAO(世界食糧農業機関)水産委員会が採択したガイドラインに沿って認証された漁業から生産され、流通―製造・加工―販売の全ての過程でCoC認証を取得した事業者により、きちんと分別管理して取り扱われたものだ。

 欧米を中心に広がっているのが国際的な非営利団体、海洋管理協議会(MSC)が運営する天然水産物の認証制度であるMSC認証で、主な審査基準は資源の持続性、生態系保全、管理システム。このほか、日本発のMELやASC、BAPなど世界中で多数の水産エコラベル認証スキームが乱立している。

 流通・加工・小売業者はCoC認証を取得することで、環境に配慮して漁獲・養殖された水産物を消費者に供給する仕組みとなっている。

 水産エコラベル商品の普及には、一人一人の消費者が有限である水産資源を食べようという意識が、これまで以上に高くなることがカギになる。

 流通大手イオンが水産エコラベル商品を初めて発売したのは2006年にさかのぼる。その後も積極的に取り組み、今年1月にはカキ漁としてアジアで初めてMSC認証を取得した「岡山県虫明産生かき(生食用)」を、首都圏と岡山県の店舗で発売した。

 これにより5月時点で取り扱う水産エコラベル商品は、MSC認証25魚種43品目、ASC認証11魚種20品目に上り、グローバル認証商品で国内最大級の品ぞろえを誇る。

 今後も拡大していく方針で「現時点では天然魚の場合はMSC認証、養殖魚の場合はASC認証を取得した商品を拡大していきたい」(イオン)と意欲を示す。

 イオンでは、売り場での具体的な取り組みとして「15年に認証商品だけを集めたコーナー『フィッシュバトン』の展開を開始し、現在は68店舗に拡大している」という。

 フィッシュバトンのネーミングは、将来も豊かな魚食文化が守られ、魚を食べ続けられる「未来へのバトン」という意味を込めている。

 イトーヨーカ堂は4月、国内大手小売業として初めてMEL認証を取得した。

 これにより、まずはオリジナルブランド商品「顔が見えるお魚。」のブリ、カンパチ、マダイ、ヒラメの養殖4魚種にロゴマークを付け、全国155店舗で販売を開始した。「顔が見えるお魚。」シリーズの生産者とともに取得に取り組み、MEL流通段階認証Ver.2.0を取得した。

 MEL認証は日本の水産業の多様性を反映し、国際標準に準拠した日本発の水産エコラベルで、マリン・エコラベル・ジャパン協議会が運営している。

 同社は「今回、CoC認証を取得したMEL認証の4魚種以外についても養殖の銀鮭やほたてなど、『顔が見えるお魚。』の生産者とともに認証取得を進めていく」とし、「天然魚であるカツオ、秋鮭、マグロなどでもMEL認証取得を拡大していく」予定だ。

 西友は3月、国内小売業で初めてBAP認証を得た「サラダえび」を全国の店舗で発売した。また、BAP認証商品以外にもMSC、ASCなど水産エコラベル商品11品目の取り扱いを開始した。

 BAP認証では、ふ化場・飼料工場・養殖場・加工工場のすべてで、環境への責任、社会への責任など4つの柱やトレーサビリティーに関する最も重要な要素を定め、それらを満たす水産物に与えられる養殖認証制度だ。

 西友の親会社で世界最大の小売企業であるウォルマートはグループでより手ごろな価格で、安全・安心な食品を提供するため、水産物を含む日常必需品のうち、主要20品目を25年までに持続可能な調達を強化・拡大していく方針を掲げている。

 こうした流通業界の取り組みの一方、注目されるのが消費者の水産エコラベルに対する受け止め方だ。

 18年度に農林水産省が行った調査(消費者モニターからの回答)によると、価格が高くても、また同程度なら約8割が水産エコラベル商品を購入するという。

 「基本的に価格への転嫁はしていない」(イオン)、「企業努力などにより通常と同じ価格設定」(セブン&アイHD)だという。西友は認知度向上を目的に「同様の商品とあまり差がないように値付けを行った」という。

 消費者の水産エコラベルの認知度については、「今年になりエコラベルの付いた商品を取り扱う企業も増え、消費者がこうしたラベルを目にする機会も増えてきており、着実に認知度は上がっている」(イオン)と見る。

 「MEL認証を幅広く知っていただくため、店頭でPOP(購買時点広告)設置やホームページで告知をしている」(セブン&アイHD)、「ここ数年で日本でも水産エコラベル認証の商品が身近になってきている。ホームページなどを通じて積極的に知らせていきたい。取り扱い品目の拡大も認知度向上につながる」(西友)としている。

 持続可能な水産資源の取り組みには、消費者の理解と支持が一層求められる。

(KyodoWeekly・政経週報 2020年6月15日号掲載)

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