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「旬」で季節を感じる  山下弘太郎 キッコーマン国際食文化研究センター 

2020.06.08

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「旬」で季節を感じる  山下弘太郎 キッコーマン国際食文化研究センター の写真

 家で過ごす時間が長くなりました。そんな「非日常」の中でも感じることがあります。通勤にかかる時間と労力のなんと大きいことか。(写真は筆者が自宅で育てたミニトマト)

 そして、その代わりに見えてくるものもあります。桜の頃に始まったこの「非日常」ですが、もう梅雨も近づき、着実に夏へと向かっています。この日々の変化が食卓で感じられるようになった方も多いのではないでしょうか。

 春先にフキノトウをいただきました。少しでも長く春の味覚を楽しもうということでフキみそにしてごはんと一緒に味わっていたのが3月。

 4月にはステイホームの中、たけのこを煮物やチンジャオロースにして満喫しました。新玉ねぎが出回るようになり、缶のツナと一緒にサラダにしてその甘みを実感し、先日は今年最初の初ガツオのタタキに舌鼓を打ちました。

 日本には昔からいわれてきた「旬」というものがあります。季節ごとに、その時が一番おいしく、栄養価も高くなる食材を指すこの言葉。

 もともと中国では「10日」を表す漢字であったものが、平安時代中期以降に宮廷の儀式の一つの呼称に使われるようになって以降、現在のような意味合いを帯びたのだとされています。

 さらに江戸時代になると「はしり」「旬」「名残り」の区分が出てきて季節感が細分化されてゆきます。

 特に江戸っ子は「初物好き」で、競って「はしり」という出始めのものを求めたようです。現代では「旬」の中で「はしり」「盛り」「名残り」という区分けをするようですが、元々の「旬」は「盛り」のものを指すのです。

 もうひとつ、「であいもの」という表現があります。同じ「旬」の食材で相性の良いものを指す表現です。若竹煮ではたけのことわかめが、ぶり大根ではその名の通りぶりと大根が相性抜群の「であいもの」というわけです。

 お住まいの地域によってもそれぞれの「旬」の食材、「であいもの」の組み合わせがあるのではないでしょうか。

 私の郷里では夏になるとよくキュウリのかすもみが食卓に上がりました。キュウリを薄切りもしくは輪切りにして軽く塩でもみ、酒かすとあえただけのものなのですが、これにかつお節を振り、しょうゆをかけると立派な一品になるのです。

 夏の暑いさなかにキュウリのしゃきっとした食感と酒かすのうまみで食が進みます。これからキュウリが「旬」の季節ですのでぜひお試しください。

 これから枝豆も出てきますし、ベランダでミニトマトなどを栽培している方も収穫の時期になります。

 「旬」とは季節を感じること。この機会に毎日の食卓を通じて季節を感じ、味わいながら楽しみましょう。

 多くの方がまだ大変な思いをされていると思います。そのような中、食事をすることが、気持ちを落ち着け、少しでも幸福感につながることを願ってやみません。

(KyodoWeekly・政経週報 2020年6月8日号掲載)

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