食料に輸出規制の暗雲 小視曽四郎 農政ジャーナリスト
2020.04.27

(写真はイメージ)
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の収束がみえない。そんな中、食料の「他国依存国家ニッポン」にとって由々しき動きが出てきた。感染防止へ世界的に広がる移動規制や物流の混乱を受け、食料貿易に「輸出規制」という暗雲が漂い始めたのだ。一部の国の食料の「囲い込み」が連鎖するとやがて食料自給率が低い日本はその直撃を免れない。
新型ウイルスの新たな感染の中心になった欧州。欧州連合(EU)域内は内外からの人の移動を厳しく制限。このため農業の人手の確保にめどがつかず、作付けや栽培を減らすかどうかの瀬戸際だ。
そんな中、世界最大の小麦輸出国ロシアが輸出制限を始めた。通常無制限の4〜6月の穀物輸出量を700万トンに制限(前年720万トン)、穀物加工品は停止した(ロイター通信など)。国内供給を優先するためだ。セルビア、カザフスタンも食用油などの輸出を規制しはじめた。
一方、アジアでも世界最大のコメ輸出国インドが自国の貧困層への配給を優先し、輸出規制をしいた。また、中国もコメ、小麦の備蓄に努めている。コロナ禍の長期化を見越し、過去最大規模だという。
こうした一部の国の不穏な動きに、英王立国際問題研究所の研究者は3月下旬「食料ナショナリズムの兆候はすでに表れており、今後強まる」と警鐘を鳴らしている。
また、3月末、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)の3人の事務局長が「食料供給への潜在的影響や世界貿易、食料安全保障への意図しない結果を最低限に抑えるよう注意すべきだ」と異例の共同声明を発表。「自国第一主義」に陥り、長年にわたり築いてきた相互補完主義の食料供給システムが混乱しないよう求めた。
ただ、今のところ小麦やトウモロコシ、大豆の相場はほぼ落ち着いており、日本にとって最大の依存先である米国やカナダ、豪州では輸出制限の動きはない。
しかし、コロナ対策は人の動きを抑えるのが最大の防止策。東欧や北アフリカからの季節労働者が足りない西欧に限らず、米国ではメキシコからの季節労働者が不足。日本でも昨年3000人以上の技能実習生が入国できず、各地で困り果てている。このままでは世界的な農業生産の縮小の恐れがあり油断できない。
並行して気象災害も相次ぎ、農作物が最終的にしっかり生産できるとも限らない。東南アジアでは干ばつでタイがコメの作付けを3割減らし、国際価格が急騰、フィリピンでは食料デモが起きている。新聞投書欄にマスクの奪い合いを引き合いに「食料のパニックでなくて良かった」との声があったが、コロナ禍と気象のダブル災害が農業や食卓を襲わないことを祈りたい。
(KyodoWeekly・政経週報 2020年4月27日号掲載)
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