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製紙各社、飲料容器に注力 「脱プラ」受け、食品充填機メーカーと連携

2020.03.30

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製紙各社、飲料容器に注力 「脱プラ」受け、食品充填機メーカーと連携の写真

 インターネットの普及などを背景に、国内の紙需要が縮小する中、製紙各社が飲料容器などの紙容器化に注力している。海洋プラスチック問題が注目され、環境負荷を軽減する「脱プラ」が加速しており、ペットボトルや缶から紙容器化への動きや、長期保存が可能なことからフードロスが少ないアセプティック(無菌)分野に対応。食品充填(じゅうてん)機メーカーと連携して充填機の開発を急ぐ動きを活発化させている。

プラから紙へ


 日本製紙と食品充填機で国内大手の四国化工機(徳島県北島町)は昨年12月、食品用紙容器の充填包装システムの競争力強化で資本・業務提携した。

 日本製紙は「両社は40年に及ぶ総代理店契約の下、強固なパートナーシップを築いているが、今回の資本参加は今後も力強いタッグを組んでいくことの意思表明」と位置付けている。

 その上で、日本製紙は液体用紙容器ビジネスを主力事業としていく方針を策定。これを具体化していくためには、四国化工機は欠かせないパートナーで、四国化工機にとっても国内向け紙容器成形充填機で日本製紙は欠かせない存在だ。

 国内の飲料市場では、生乳関連製品には紙容器、清涼飲料にはペットボトル、コーヒー飲料には金属缶がそれぞれ大きなシェアを占めている。

 世界的な脱プラスチックの潮流の中、環境意識の高い顧客層を中心に、プラスチックからガラス瓶や金属缶、紙容器での代替が始まっている。

 日本製紙は、国内でもペットボトル供給能力や充填ラインの普及度合いなどを勘案すると、一気にペットボトルから紙容器へのスイッチは考えにくいとした上で「今後、世界的な環境意識の高まりの中で、もともとCO2排出量が少なく素材的にカーボンオフセットを実現している紙容器にはチャンスがある」と考えている。

〝ちびだら飲み〟に対応


 日本製紙と四国化工機は、これまで高速フレキシブル充填機や、口栓付き高衛生高速充填機など、チルド分野では世界をリードする充填機を販売してきた。

 また、食品・飲料の滅菌と包装材料の滅菌を別々に行い、無菌環境下で食品・飲料を容器に充填・包装し、長期保存を可能とする技術であるアセプティック分野でも、長期の常温保存が可能なレンガ型紙容器無菌充填システムに磨きをかけている。

 アセプティックはロングライフ牛乳、乳飲料、加工乳、清涼飲料水、コーヒー、コーヒー飲料など流体食品製品の殺菌処理の主流技術だ。

 さらに、果肉入りジュースなど固形物を含む飲料や、スムージーのように高粘度の飲料を高速無菌充填できる「NSATOM」を両社で開発。「2020年度に市場投入を予定している」(日本製紙)という。

 NSATOMは、常温での長期保存が可能で、紙容器に取り扱いが容易な口栓を付けたことから、日常生活の中で持ち運んだり、オフィスで〝ちびだら飲み〟ができる紙容器だ。こうした特性は現在のペットボトルと似ているため、ペットボトルなどのプラスチック容器からの代替も期待されている。

紙容器事業で合弁


 王子ホールディングス(HD)は、石塚硝子(愛知県岩倉市)と合弁を設立し、共同で牛乳パックなどの紙容器製造に参入する。石塚硝子が従来、展開している紙容器事業を分社化し、新会社に王子HDが出資。今年9月に事業を開始する。

 従来、石塚硝子が手掛けている1リットルや500ミリリットルなどの牛乳パックに代表されるチルド用の紙パックを合弁後も同様に販売する。「将来は、もっと保存性の高い容器など、高付加価値品の開発を検討していきたい」(王子HD)と意欲を示す。

 同事業で、原材料として現在、石塚硝子が調達しているラミネート原紙については今後、段階的に王子HD製品に切り替える予定。

 国内以上に需要の伸びが期待される東南アジアで、まずはチルド用の紙パックを中心に事業化を目指している」という。現状の石塚硝子の対象事業の売上規模を合弁会社が引き継ぐことから、年間売上高は70億円程度を見込んでいる。

スリムな形状


 北越コーポレーションは、子会社の北越パッケージ(東京都中央区)が三菱商事子会社の紙販売会社、三菱商事パッケージング(同)と共同で、17年からイタリアの飲料用紙容器大手、IPIのアセプティック飲料用紙容器の無菌充填システム「NSA―evo(イーボ)」の販売を始めた。同システムではキャップを製品天面の中央に配置することができるスリムな形状の液体容器を製造する。

 北越コーポは「アセプティック容器はフードロスが少なく、チルドに比べ輸送面などで多くの利点があり、ペットボトル飲料メーカーなどでも関心が高い」としている。

 ペットボトルに比べ、充填機の生産能力の違いがあり、大量生産には向いていないこと、容器コストが樹脂に比べ割高な点が課題だが「プラスチック使用量削減策の一つとして紙容器の採用が増える可能性はある」と期待している。

 環境にやさしい紙容器の需要が今後も広がることが見込まれ、コンビニやスーパーなどで紙容器飲料を見掛ける機会が増えそうだ。

(KyodoWeekly・政経週報 2020年3月30日号掲載)

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