「つくる」と「たべる」をつなぐ 直売所で豊かさを感じる 石井勇人 共同通信アグリラボ所長
2019.12.17
豆腐一丁20円、もやし一袋10円、バナナ3~4本で100円。こんな「激安」が当たり前になって久しい。確かに価格は市場で決まるのかもしれないが、「安ければよい」という消費行動に対して、どこかで歯止めをかけなければ生産活動は持続できない。
その前提として、食べ物がどのようにしてつくられて届けられるのかを、消費者や納税者が理解する必要がある。「消費者と生産者の交流が重要」と、一般論を語るのは簡単だが実行は難しい。
その最新の試みとして、生産者が直売所に持ち込んだ農畜産物を使って調理を学ぶユニークな教室を紹介する。
静岡県のJA掛川市は、直売所「さすが市」(同市弥生町、写真)を全面改装し、2020年1月末に「あぐりきっちん」を併設する。月謝は6000円(食材費別)の定額制で、好きな時に何回でも学べる。ピザやお菓子などのコースもあり、郊外の子育て夫婦などが気軽に参加でき、「作品」は教室で試食、持ち帰りも可能だ。(上の写真は試作メニューを説明するスタッフ)
JA掛川市の松永大吾組合長は「できるだけ多くの市民に利用してもらい、生産者のつくる思いを感じて、食の豊かさ、農業の重要性、安全・安心を理解してほしい」と狙いを語る。
(JA掛川市の松永大吾組合長とABCクッキングスタジオの志村なるみ副社長)
教室運営のノウハウやレシピ開発は、全国126店舗で料理教室を展開しているABCクッキングスタジオ(東京)が支援する。同社の志村なるみ副社長は「新しいビジネスモデルを試行できる」と期待している。
JA掛川市の「実験」がうまくいけば、「あぐりきっちん」の2号店、3号店も登場しそうだ。「農業」に何を結びつけるのか。その「何」をどうやって、いち早く見つけてくるかが、生産者と消費者を結びつけていくポイントだ。
(めぐみレター 創刊準備号掲載)
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