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稼げる農業経営のススメ  新井毅  築地書館

2021.08.29

 

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 著者の造語だと思われる「ホワイト化」が、本書を通底するキーワードだ。「衰退産業」「きつくてもうからない」「若者が参入しない」「高齢化が加速」といった農業のブラックなイメージを覆し、ポジティブな側面に光を当てる。

 それを「やりがい」といった情緒的な思い入れや、「成長産業になるにはこうするべきだ」と言った観念的な政策論ではなく、誰でも入手できる公表統計を用いて客観的に示している点が、本書の最大の特徴であり、強みでもある。

 統計に基づいて、農家出身でない若い新規就農者が増えていること、農業総産出額は増加基調であること、「主業農家」の所得は全世帯平均所得の1.5倍であることなどを淡々と示している。

 一方、農林漁業の付加価値は低下傾向で、耕作放棄地は拡大し、認定農業者でも3割しか後継者が決まっていないという課題も提示する。

 「ホワイト化」のための具体策として、ブランド化、6次産業化、海外市場の開拓、財務分析によるコスト構造の把握などを挙げ、各地の成功事例や日本政策金融公庫の取組みも紹介している。

 著者は1985年に農林水産省に入省し、バイオマス室長、文書課長、総務課長などを歴任、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長として地方創生に深く関わった。その経験が本書の骨格をなしている。現在は日本政策金融公庫代表取締役専務農林水産事業本部長。(1800円+税 築地書館)