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ゼロから始めて地域の中核に  ペルー出身の野菜農家  「新・農業人」AFCフォーラム2021年7月号から

2021.07.09

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 新型コロナの感染拡大であぶりだされた農業の弱点の一つは、労働力不足だ。技能実習生の往来が制限され、外国人への依存が鮮明になった。いつも思う。日本の農業を支えている外国人は、どんな気持ちで働いているのだろうかと。

 日本政策金融公庫の月刊誌「AFCフォーラム」(2021年7月号)の連載「新・農業人」が取り上げたザンブラノ・ルマイナ・ビクトルさんは、1994年に南米ペルーから「3年間がむしゃらに稼ぐ覚悟」で来日し、愛知県の工場で働いた。

 知り合った智恵さんと2006年に結婚して日本永住を決意、就農の経験はゼロだったが、人に雇われる立場ではない職業として農業を選び、県の農業改良普及センターで指導を受けた。

 智恵さんも農業の経験はなかったが、農業大学校で学び、夫妻は今や、同県豊川市で12㌶のキャベツ畑を中心にトマトやナスも生産する地域の中核的な野菜農家だ。インドネシアからの研修生7人とともに働く。ビクトルさんは「(研修生は)同志」、「がむしゃらに仕事をしたいという、揺らぐことのない軸がある」と語る。

 外国人労働者の本当の気持ちは「同志」でなければ理解できない―ベテラン写真家の河野千年氏が撮影したビクトルさんは、無言で訴えているように感じる。母国を離れて四半世紀以上の喜びと悲しみが伝わるモノクロ写真に魅せられた。

 「初めて記事を書いた」という同誌編集部員の文章も、がむしゃらな夫・ビクトルさんと慎重な妻・智恵さんのコントラストをうまく表現していて読ませる。