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続 農家に学び、地域とともに  農山漁村文化協会

2020.08.17

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 日独伊三国同盟が締結された半年前、1940(昭和15)年325日に農文協が発足した。敗戦の混乱で事実上崩壊したが、再建を果たし独特の活動が続いてきた理由は、「農家に学び、地域とともに」という徹底した現場主義だ。

 農文協の正式名は一般社団法人農山漁村文化協会という。職員が車やバイク、時には自転車や徒歩で農林漁家などを訪ね、同時に農山漁村の話題、困り事、意見を聞き、農場や加工所の様子を観察する。この一連の活動を営業や取材ではなく「普及」と言い、出版する書籍や雑誌などは商品ではなく「文化財」と呼んでいる。

 本書は創立70周年に刊行された「農家に学び、地域とともに」(70年史)の続編であり、東日本大震災・原発事故、環太平洋連携協定(TPP)、毎年のような風水害、農家の高齢化とそれに伴う世代交代と、まさしく激動と危機の10年間を扱っている。

 職員が普及活動の中で感じたことや、編集の裏話が盛り込まれていて興味深いが、巻末の発行図書年表には驚くしかない。現代農業、季刊地域、うかたまなど、農文協の定期刊行物のほか、単行本だけでも約450点。農家の人口が減り出版不況が続く中で、これだけの書籍を発刊できるのは、文化活動としての底力があるからだ。(264ページ、税込み2970円、農山漁村文化協会)