日本の食文化をインドに 健康志向も関税が難点、食品展 NNA
2024.10.01
日本の食品業界が、人口14億人を超えるインド市場の開拓に挑戦している。首都ニューデリーでは9月19~22日にかけて、国内最大規模の食品産業の展示会「ワールド・フード・インディア」が開かれた。今年のパートナー国は日本。NPO日本インド国際産業振興協会(JIIPA、東京都港区)が在インド日本大使館と協力して編成した「ジャパン・パビリオン」に日系25社・団体が出展した。インドでは近年、健康志向が高まっており、新たな選択肢としての日本の食文化に注目が集まる。(写真上:緑茶を試飲しようと、キョート・ビバレッジズのブースには多くの人が訪れた=22日、首都ニューデリー、NNA撮影)
インド食品加工業省が主催のワールド・フード・インディアは、今回が3回目。9カ所の展示会場で、世界108カ国・地域から1557社が出展した。開催に当たり、モディ首相は声明で、「世界の食品業界や学界の優秀な人材が互いの経験を共有し、双方向で学ぶためのプラットフォームになる」と歓迎した。
■緑茶が選択肢に
ジャパン・パビリオンでは、日本酒やたこ焼き、抹茶を使った日本のお菓子など、物珍しさに地元の人たちが列を成した。中でも、インド北部ジャムに拠点を置くキョート・ビバレッジズは、京都の企業と緑茶や玄米茶、抹茶などを出展し、存在感を示した。出展は2年連続。同社の担当者は、「反応は上々で、交流サイト(SNS)で抹茶を知った若年層が目立つ」と話した。他にも、糖尿病など生活習慣病への懸念から、インドで主流の甘いミルクティー「チャイ」の代わりを探している人も多いという。緑茶を試飲した人からは、「思っていたほど苦くなく、飲みやすい」との声があった。
同社のサヒル・マハジャン最高経営責任者(CEO)は、緑茶の市場が見込めるデリーで、まずはカフェのような店舗開設を考えていると明かした。「緑茶はチャイに取って代わるわけではないが、(健康志向の人への)新たな選択肢となるだろう」と語った。
新たな市場を求めて今年初めて参加した、まるゑい(三重県四日市市)も主力の緑茶や抹茶などを出展した。堤淑明社長は、「手応えを感じる。特に若い世代を中心に足を運んでくれている」と語った。ただ、「緑茶は日本の人気商品の一つにとどまっており、知っている人は多いが、理解はまだ進んでいないように感じる」と話した。
緑茶の懸念材料としては、日本からインドに輸入すれば、地場ブランドよりも割高になることだ。キョート・ビバレッジズによると、25グラム~1キログラムの商品には約100%の輸入関税がかかるため、主力商品に影響する。加えて、緑茶の市場が十分に開拓されておらず、輸入業者の利益が小さいことも課題となる。
■甘酒も好評
ニューデリーに拠点を置くアスク・インディアは今回、日本のアスク本社がある山形市で製造した甘酒を初出展した。日本人にはなじみのある甘酒だが、現地の人たちの反応はどうか。アスク・インディアの河合龍太社長は、「反応はすごく良い。おいしいエナジードリンクとして喜んでくれている」と話した。一方、こちらもやはり価格がネックとなる。日本で甘酒を製造し、インドに輸入する場合、1袋およそ300ルピー(約516円)になるという。河合氏は「コストをどれだけ下げることができるか検討している」と述べた。
JIIPAによると、ナガタフーズ(茨城県笠間市)が出展した、茨城の和栗や芋を使ったスイーツも好評だった。和栗を知らない人も多かった中、甘さが控えめで食べやすいとの声も多く聞かれたという。
■JIIPA「企業は展示会で反応見て」
最終日には、食品加工業省のビットゥ閣外大臣がジャパン・パビリオンを訪問し、企業関係者らと直接話をする場面も見られた。同席したケツト科学研究所(東京都大田区)の海外営業部門、千木良沖正部署長は、「製品をインドに持ってくるだけではなく、技術移転も大事だという旨を話していたようだ。地場企業に納入できる価格なのかも気にしていた」と述べた。同社は食品加工業には欠かせない、水分計などの測定機器の開発・販売を手がける。インドには約40年前からコメの水分計を輸出しており、現在は年間1000台ほど輸出している。
(食品加工業省のビットゥ閣外大臣(右)がジャパン・パビリオンを訪問。関係者らと直接話した=22日、首都ニューデリー、NNA撮影)
今年の展示会について、JIIPAのゴドガテ・プラシャント理事長は「インドでは健康志向が高まっている。日本食は健康的な印象があり人気がある」と話した。ビーガン(完全菜食主義者)対応の商品も好評だったという。また、日本企業によるインド参入への関心は「食品業界にとどまらず非常に高まっている」とした上で、「日本企業にはこうした展示会に一度来てもらい、反応を見てほしい」と述べた。(NNA)
最新記事
-
コーヒー1杯がついに6元台 中国で安売り激化、出来合い品より割安 N...
中国のコーヒーの価格競争が激化する一方だ。カフェ業界と茶系ドリンク(中国語:新茶飲料、コーヒーも販...
-
日本の食文化をインドに 健康志向も関税が難点、食品展 NNA
日本の食品業界が、人口14億人を超えるインド市場の開拓に挑戦している。首都ニューデリーでは9月19...
-
新米1等63%、出足低調 週間ニュースダイジェスト(9月22日~9月...
▼立民新代表に野田元首相 決選投票で枝野氏破る(9月23日) 立憲民主党は東京都内で開いた臨時党大...
-
インドネシアのハラル認証義務化を商機に 日本企業、食品関連で拡販狙う ...
日本の食品関連業者が、インドネシアのハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)市場で販路拡大を狙って...
-
地価上昇率、バブル後最大 週間ニュースダイジェスト(9月15日~9月...
▼地価上昇率、バブル後最大 平均1.4%、7月時点(9月17日) 国土交通省が公表した7月1日時点...
-
無償給食、牛乳に代わり「魚乳」使用へ NNA
インドネシア海洋・水産省は9月12日、プラボウォ・スビアント次期政権が導入を予定する給食無償化プロ...
-
豪当局、遺伝子組み換え小麦の試験栽培認可 NNAオーストラリア
オーストラリア連邦政府の遺伝子技術規制局(OGTR)が、アルゼンチンのバイオテクノロジー企業バイオ...
-
タイ産のエビ、児童・強制労働リストから除外 NNA
米労働省が発表した「2024年の児童・強制労働で生産された物品リスト」および「最悪の形態の児童労働...
-
G20農相3年ぶり共同宣言 週間ニュースダイジェスト(9月8日~9月...
▼マグロ増枠、7月合意維持 米1.8倍、日本に追い風(9月9日) 水産庁は東部太平洋のクロマグロの...
-
頼もしい未来の畜産農家 青山浩子 新潟食料農業大学准教授 連載「グ...
畜産を学ぶ高校生が今年も海外から多くを学んだ。農業者間の国際交流を担う組織、公益社団法人国際農業者...