コーヒー1杯がついに6元台 中国で安売り激化、出来合い品より割安 NNA
2024.10.07
中国のコーヒーの価格競争が激化する一方だ。カフェ業界と茶系ドリンク(中国語:新茶飲料、コーヒーも販売する)業界が一体となって激しい安売り競争を繰り広げており、茶系ドリンクチェーンの「蜜雪氷城」はこのほど1杯6.6元(約134円)の商品を投入した。もはやコンビニで売られている出来合いのコーヒー商品より安い水準で、企業は利益率を限界近くまで下げているとみられる。(写真はイメージ)
カフェ業界や茶系ドリンク業界は昨年あたりから値下げの動きをみせている。
今年は値下げの動きを一層強め、中国で最多の店舗数を誇るカフェチェーン「瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)」は1杯9.9元、近年急速に存在感を強めているカフェチェーン「庫迪珈琲(コッティコーヒー)」は1杯8.8元の商品を投入した。コッティコーヒーは低価格を3年間維持すると表明している。米スターバックスは価格競争に参戦しない方針を示していたが、今年に入ってクーポン券の投入を増やしており、実質的な値下げに動いている。
茶系ドリンクチェーンもこうした動きに加わっており、ニュースサイトの藍鯨財経によると、同業界大手の蜜雪氷城は6.6元とさらに強気な価格を設定した。
上海市のコンビニでは、出来合いのコーヒー商品の多くは6.6元より高い価格で売られている。スターバックスのコンビニ販売用の商品は10元以上。同市の日系スーパーでは、180ミリリットル程度の小型缶コーヒーの一部のみが6.6元以下で販売されている。入れたてコーヒーが出来合いのコーヒーより安いという倒錯した状態が見受けられるようになった。
■高価格チェーンは苦境
価格を下げられない企業は苦しい局面を迎えている。
中国のカフェチェーン「Seesaw(シーソー)コーヒー」は1杯25~35元の高価格帯でコーヒーを提供しており、価格競争激化で割高感が目立つようになったことで苦しんでいる。現在の店舗数は78店で、今年1月の130店から大幅に減った。
カフェチェーンの先駆者として高いブランド力を持つスターバックスですら、安穏としていられない状況。今年4~6月期の中国市場の売上高は前年同期比11%減の7億3380万米ドル(約1040億円)で、既存店比較では14%減った。
安売り競争の背景にあるのは消費者マインドの悪化。中国の消費者は不動産不況などを受け、国内経済に悲観的見通しを持つようになっている。その結果、支出を抑制する傾向を強めており、価格に非常に敏感になっている。
これまで消費者の安物買い志向が最も端的に表れていたのは自動車。地場系の割安な車種が売れ、外国系の割高な車種の販売は低迷している。コーヒーも自動車と並んで価格破壊の象徴的分野になってきた。
激しい価格競争が展開されている分野では、企業はコスト削減に力を入れる必要があり、賃上げに消極的になる。コーヒーや自動車のような分野が今後さらに増えることは、所得向上の観点からは望ましくない。
■普及には追い風
ただ、コーヒー業界の関係者は、足元の価格競争にメリットがないわけでもないと指摘する。
上海市のカフェ経営者は、「中国ではコーヒーはまだ普及の途上にある。価格の下落は、コーヒーを飲んでみようと思う人の増加につながり、普及に弾みがつく可能性がある」と述べた。
同経営者は、自身の店は高価格、高品質を売りにしていると説明した上で、「最初は廉価な店でコーヒーを飲んでいた人も次第にコーヒーの品質にこだわりを持つようになり、高価格店に行き始めるものだ」と指摘。今後のコーヒー愛好家の増加に商機があるとみている。(NNA)
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