世界初、培養「魚の切り身」 海外2社、商品化に前進 NNA
2023.05.18

培養肉製品の開発・製造を手がけるイスラエルのステーキホルダー・フーズとシンガポールのフードテック(先端食品技術)企業ウマミ・ミーツは共同で、食品の3Dプリント技術を用いた魚の「切り身」を開発した。魚の培養細胞を利用して切り身全体を再現したのは世界初という。3D印刷で成形された切り身製品の商用化に向けた大きな一歩となる。(写真:ウマミ・ミーツ提供)
ステーキホルダー・フーズは、独自の3Dバイオプリント(培養細胞で3D印刷する食品再現)技術を活用し、さまざまな種類の培養肉や培養シーフード製品を開発している。ウマミ・ミーツは、ウナギをはじめとする希少魚・高級魚の培養肉の開発・製造を専門とするフードテック企業だ。
両社は2022年7月に共同で製品を開発することを発表していた。ステーキホルダー・フーズはこのほど、ハタの培養細胞をウマミ・ミーツから提供してもらい、独自の3Dバイオプリント技術を用いてハタの切り身を再現した。
ステーキホルダー・フーズは試作品の開発段階において、ウマミ・フーズの培養細胞に対して効果的に機能するバイオインク(生細胞の接着、増殖、分化をサポートする天然または合成ポリマー)を生成することに成功した。
両社は現在、試作品の味と栄養価の最適化を目指して改良を進めている。商品としての形状や食感も改善し、本格的な商業生産に向けた製造工程の開発に着手する。
規制当局への関連書類を24年初頭に提出し、許可が下り次第、生産を開始する。まずアジア市場に焦点を定めた製品を、食品メーカーと協業して製造・販売する計画だ。
ウマミ・ミーツのミヒル・ペルシャド最高経営責任者(CEO)はNNAの取材に対し、「市場への投入時期は今後数カ月以内に発表する。製品の詳細は今年後半に公表する予定だ」と述べた。ステーキホルダー・フーズのアリク・カウフマンCEOは、「他の魚の培養細胞も使用できるよう協業関係を拡大していきたい」と語った。
両社の協業は、シンガポール―イスラエル産業研究開発(R&D)財団からの助成金の支援を受けている。同財団はシンガポール企業庁とイスラエル・イノベーション庁が、両国企業間の共同研究開発プロジェクトを支援し、商業化に結び付けるために共同で設立した。
今回の試作品の発表イベントはイスラエルにあるステーキホルダー・フーズの施設内で4月下旬に開催。同国のネタニヤフ首相も参加した。(NNA Celine Chen)
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