「書評」米産業・水田農業の動向と将来展望 「日本の農業―あすへの歩み」259集(農政調査委員会)
2023.05.29
「日本の農業―あすへの歩み」の259集は、一般財団法人 農政調査委員会の中に設けられた「米産業懇話会」の昨年から今年の活動の記録だ。
農林水産省は昨秋から、食料・農業・農村基本法の改正に向けた作業を進めている。しかし肝心の、これまでの農業政策の検証は素通りと言っても良いほど議論は深まっていない。特に日本の農業の中枢である米は、減反政策も含め、避けては通れない課題であるはずだが、ほとんど議論されないまま、食料・農業・農村審議会の基本法検証部会は5月29日に「中間とりまとめ」を公表した。
農水省の現役官僚の中には「今見直すべきことは、基本法ではなく米政策」という匿名発言もあるが、基本法改正は政治主導で進められており、改正案の来年度の国会提出は既定路線だ。基本法にせよ米政策にせよ、検証作業は農水省にとって自己否定に直結する痛みを伴う。しかし、大きな政策転換には、それなりの覚悟が必要だ。
米産業懇話会は、学者や農水官僚OBが参加し、「政府の検証部会が米政策を検証しないなら、外野席から検証しよう」という気合いを感じる。米政策だけでなく基本法全体の検証に踏み込むことを期待したい。
「日本の農業-あすへの歩み」は、1320円(税、送料別)。購入・問い合わせはFAX03(5213)4331、または農政調査委員会のホームページの送信フォームで。