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「書評」農業経営者人財の育成  「日本農業の動き219」(農政ジャーナリストの会)

2023.08.14

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「書評」農業経営者人財の育成  「日本農業の動き219」(農政ジャーナリストの会)の写真

 ウクライナ情勢などを受けて食料安全保障の重要性が認識され、食料・農業・農村基本法の改正に向けた作業が進んでいるが、現実に「誰が農業を担うのか」という人材に関する議論はあまり深まっていない。

 農水省は、基幹的農業従事者(主に自営農業に従事している人)が20年後に約30万人に減ると予想している。20年前に約230万人だったことを考えると、まさしく「激減」だ。この危機感が浸透していない。さらに従来は主流だった家族経営が減るため、「誰が」を考える場合に、農場で働く労働者と農業経営者を切り分けて考える必要性も増している。

 農政ジャーナリストの会は、農業経営者の育成に焦点を当て、2022年秋から年末にかけて研究会を開いた。本号はその採録だ。講師は、折笠俊輔・公益財団法人流通経済研究所研究員、澤浦彰治・株式会社野菜くらぶ代表取締役、前田茂雄・一般社団法人ナフィールドジャパン代表理事、三瓶清志・南郷トマト生産組合元組合長だ。

 しっかりした経営哲学を持つ優秀な経営者の存在に安堵する。しかし、より難しい課題は、経営者の育成よりも労働者の確保や家族経営の存続の方にあるように思う。

 本号は、38回農業ジャーナリスト賞の受賞作の概要や、受賞者のコメントも収録している。日本農業の動き219号(経営力を高めるには)は、農山漁村文化協会(農文協)発行、税込み1320円。