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「書評」最新データ、活動例盛り込む  中山間地域ハンドブック(佐藤洋平・生源寺眞一 監修)

2022.05.16

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 農業分野になじみがない人には、「チュウサンカン」と読むのも難しいかもしれないが、中山間地域とは、山間地とその周辺の、農業を営む上で条件が悪い地域のことだ。この地域における農業は全国の耕地面積の約4割、総農家数の約4割を占め、国土の保全や水資源の維持、伝統文化の継承など重要な役割を担っている。

 また、人口減少、高齢化、人材不足という点では課題先進地であり、中山間地域の今後の展開は、日本全体の将来の生活や経済を占う試金石だ。それにもかかわらず、これまで中山間地域について分かりやすく概説した本が少なかった。

 本書は、実務家や研究者ら「産・学・民・官」のネットワークである特定非営利活動法人「中山間地域フォーラム」のメンバーがボランティアで作り上げた。最新のデータも盛り込んだ初の「中山間地域白書」であり、学生向けのテキストであり、地域のリーダーや自治体職員らが実務で活用できる手引書でもある。

 概説のほか、「田園回帰」「半農半 X」「関係人口」「田園文化」「脱炭素・再生可能エネルギー」「農泊」など36のテーマについて、同フォーラムのメンバーである研究者やジャーナリスト、地域のリーダー、元町長など実践者が執筆し、初代会長で特別顧問の佐藤洋平東京大学名誉教授と、会長の生源寺眞一福島大学食農学類教授が監修した。

 島根県邑南町、高知県梼原町、宮崎県西米良村、群馬県南牧村など、ユニークな活動を実践している事例も豊富に盛り込んだ。中山間の振興を願う市民の遺贈金を基に刊行し、執筆者は印税を辞退し安価に抑えたという。農山漁村文化協会(農文協)、1980円。