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「研究紹介」 深刻な農産物の鳥獣害  「地域ぐるみ」の対策が必要  農林金融2021年6月号から

2021.06.20

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 札幌市東区の市街地にクマが出没し、6月18日に4人が襲われけがをした。大捕物の模様や男性の背後から襲いかかるリアルな映像も放映された。住宅街でさえ野生動物と人間の生活圏の境界線が危うくなっている。

 ましてや、中山間では「イノシシやサルの餌を栽培しているようなものだ」「畑を柵で囲んだ結果、人間がおりの中で生活している」といった状況が指摘されており、農産物の鳥獣被害は深刻だ。

 対策として「捕獲」をイメージしやすいが、ハンター任せとなる傾向が強く、効果も限定的だ。抜本的な対策としては、農地に隣接する茂みを刈り払って見通しを良くし、鳥獣の餌となる収穫の残り物や家庭の生ごみを片付け、葉ニンニクやエゴマなど餌になりにくい作物を導入するなど、地域ぐるみの防御が必要だ。

 それには、猟友会、自治体、農業協同組合、資材メーカーなど多数の関係者をまとめていく求心力が不可欠だ。農林中金総合研究所の「農林金融」(2021年6月号)に収録された藤田研二郎研究員の「農協系統の獣害対策と地域内外の連携」は、農業協同組合の役割が極めて大きいことを考えさせる。はだの都市農業支援センター(神奈川県)、JAしみず青壮年部(静岡県)、JA全農などの実践例も具体的に紹介されている。

 少し気になるのは「中間支援組織」という用語だ。「さまざまな主体同士を媒介し、現場の活動を促す役割」という趣旨は理解できるが、「中間支援」では、農業協同組合は最前線に出ないという消極的な語感がある。地域ぐるみの鳥獣害防衛策の中枢として、もう少し当事者意識を感じさせる前向きな用語がないのかと感じた。