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伸びるクラフトビール市場  中国、高級志向が追い風  NNA

2023.03.29

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 中国でクラフトビール(小規模醸造所がつくる高品質なビール)市場が成長期に入りつつある。昨年から今年にかけて小規模な醸造所(クラフトブルワリー)による生産計画が相次ぎ発表されており、中でも中西部の地域や小規模都市での投資事業が目立つ。高級志向の高まりなどを背景に、消費規模も右肩上がりを続けており、2025年には販売額ベースの市場規模が21年から3倍になるとの指摘がある。(写真はイメージ)

 経済紙の北京商報によると、クラフトビールの生産事業は昨年から現在にかけて計14社が計画を発表。総投資額は75億元(約1424億円)に上る。

 14社の生産事業は全国11地域に分布。クラフトビールの生産事業はこれまで主に沿海部大都市の1級都市や地方大都市の2級都市で推進されていたが、近年は潮目が変わり、中西部の地域や地方小規模都市の3~4級都市で事業に着手する動きが目立つ。地方政府の積極的な誘致活動が要因の一つとみられる。

 このうち泉麦酒業は山東省済南市でクラフトビールの生産事業に着手する。同市に設ける拠点の生産能力は20万㌔㍑で、10億元を投じる計画。陝西賦比興酒業は11億元を投じて、陝西省扶風県に生産能力10万㌔㍑の拠点を設置する。梅河口広源投資は105000万元を投資して、吉林省梅河口市に10万㌔㍑の生産拠点を設置する考えだ。

 残る事業は江蘇省や貴州省、黒竜江省、浙江省、四川省、福建省、内モンゴル自治区などに分布。生産能力はそれぞれ500010万㌔㍑となる。

 企業情報サイトの天眼査によると、クラフトビール関連事業を手がける中国の企業は現時点で約6200社。このうち直近5年で設立されたのは約3760社、直近1年で設立されたのは1600社余りで、企業数が急速に増えていることが見て取れる。クラフトビールの消費拡大とビール市場の多様化が企業数の増加につながっているとみられている。

高級志向が追い風に


 実際、中国のクラフトビール市場の規模は急速に拡大している。

 販売額ベースで見た市場規模は11年が33億元だったのに対し、21年は428億元に到達。消費量ベースでは、16年の3億6000万㍑から21年に約10億㍑へと増加した。

 今後も増加が続くとみられ、政府系投資銀行の中国国際金融(CICC、中金公司)は25年の市場規模(販売額ベース)が1342億元となり、ビール市場全体の17.2%を占めると予測した。25年は21年から3倍以上となる計算だ。

 コンサルティング会社の灼鼎諮詢は、中国の22年のクラフトビール消費量が143000万㍑、25年は23億㍑になると見通した。3年間で6割増えることになる。

 市場拡大の背景には消費者の高級志向の高まりがある。「ビールは安さが売りの酒」という従来の考えは徐々に薄れてきており、日本や欧米のようにビールの味そのものを楽しむ舌の肥えた消費者が増えてきている。所得水準の向上に伴い、高価格帯のクラフトビールが受け入れられ始めたことも追い風。クラフトビールの消費は若年・青年層が主力で、特に1995年以降生まれの層からの需要が急速に拡大しているという。

 高級志向の高まりは市場調査からも明らかで、阿里巴巴集団(アリババグループ)傘下の電子商取引(EC)サイト「天猫(Tモール)」の報告によると、21年の中国ビール市場はローエンドとミドルレンジのビール販売額が前年比5~10%の伸びだったのに対し、ハイエンドは20%を超える伸び幅を記録した。上観新聞は「北京のクラフトビール消費量が18年に東京を抜き、アジア1位の都市になった」と伝えた。

 市場拡大を好機とみて、投資機関の動きも活発化。21年には投資機関16社がクラフトビールの業界に2回以上の投資を行った。

異業種からも参戦


 近年は需要を取り込もうと、大手ビール企業によるクラフトビール市場への参入も相次いでいる。中でも地場大手の華潤雪花ビールは超高級ブランド「醴」を市場に投入。青島ビールも「百年之旅」や「琥珀拉格」といったハイエンドブランドを打ち出した。

 異業種から参入する動きもある。これまでに大手火鍋チェーン「海底撈火鍋」やアイスクリーム・飲料チェーン「蜜雪氷城」、飲料の「元気森林」、米コーヒーチェーン大手「スターバックス」、出前サービス大手の「美団」などが独自にクラフトビールブランドの商品販売を始めた。(NNA)

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