ベトナムに「日本式」牛肉農場 双日、乳業大手と着工 NNA
2023.03.09

双日とベトナムの乳業最大手ビナミルクは8日、北部ビンフック省で牛肉を生産する農場と加工工場の着工式を開催した。2024年6月に生産を始め、牛肉消費が拡大するベトナム国内に供給する。肥育から食肉処理、加工、物流に至るまで日本のノウハウを持ち込み、本場の「WAGYU」に匹敵する認知度の獲得を目指す。双日の藤本昌義社長は着工式で、今後は豚肉、鶏肉にも事業を広げ、ベトナム最大級の食肉事業の展開を目指す目標を掲げた。
ビンフック省で牛肉生産事業に乗り出したのは、双日とビナミルク傘下のベトナム・ライブストック・コーポレーション(VILICO=ビリコ)の合弁会社「ジャパン・ベトナム・ライブストック(JVL)」。ビリコが51%、双日が49%を出資する。合弁事業は双日とビナミルクが21年に合意した総投資額5億㌦(約688億円)を見込む協業の一環だ。(写真:JVLの着工式に出席した藤本社長(左)、クアン副首相(中央)、ビナミルクのリエン会長(右))
合弁会社はハノイ市中心部から車で約1時間離れた、ビンフック省の75㌶の敷地に「ビナビーフ・タムダオ農場・加工工場」を建設する。
22年12月に造成工事が始まった第1期には3兆ドン(約1億2600万㌦、173億円)を投じ、牛1万頭の飼育設備と年3万頭を処理できる加工施設を整備する。第2期は関連する加工食品工場を建設する計画だ。
肉牛にはビナミルクが乳業向けに育てた乳牛のうち雄牛などを活用する。ビナミルクは21年時点で約16万頭を保有しており、安定的な供給が期待できる。同社は22年の売上高が60兆ドンとベトナムで屈指の食品メーカーで、全国にブランドが浸透している。
双日は日本で培った食肉の知見を注入する。生まれた直後から健康状態や飼料を管理し、食肉処理後は機械管理した低温環境で無駄なく脱骨して歩留まりを維持。鮮度を保ったまま包装し低温物流で出荷する仕組みを整える。消費者が安全性を確認できるトレーサビリティーの確保も図る。
藤本社長は「新たな食のライフスタイルを提案し、ベトナム国産ブランド牛をつくりあげたい」と意欲を語った。新規雇用を予定する100~150人の従業員の一部には日本で研修を受けてもらい、帰国後に幹部候補として起用する予定だ。
着工式には外交や海外直接投資(FDI)などを所管するチャン・リュー・クアン副首相も駆けつけ、政府の期待の高さを伺わせた。政府は農林水産業に外資の参入を促し、経済の底上げを図っている。
ビナミルクのマイ・キエウ・リエン会長は「ハイテク農業分野で日越協力のモデルプロジェクトとしたい」と力を込めた。リエン氏は、ビナミルクの経営で手腕を振るった女性リーダーとして知られる。
日本超える市場に
ベトナムの牛肉市場は経済成長に伴い拡大が見込まれる。経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)によれば、22年のベトナムの消費量は123万㌧と日本の9割弱にとどまるが、29年までに20%近く成長し、日本を1割上回る145万㌧に達する見込みだ。
JVLは国内生産に先駆けて日本産牛肉「ユキビーフ」の輸入販売を始めている。日系流通関係者は「よく売れている。牛肉はこれからも伸びる」と期待する。
ビナビーフ・タムダオ農場での生産開始後は、米国産やオーストラリア産牛肉との競争で勝ち残る必要がある。地元メディアによれば20年に国内で消費された牛肉の70%は輸入品が占めた。環太平洋連携協定(CPTPP)に基づく関税引き下げを見込み、畜産国のカナダもベトナムへの輸出拡大を狙っているとされ、シェア争いは激化が予想される。(NNA)
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