静岡「種」ケール販路拡大 シンガポール、ドンキでも NNA
2023.02.09

静岡県の種苗メーカーとシンガポール企業の協業により栽培された葉物野菜ケールが、現地で販路を拡大している。2月初旬には日系スーパー「ドンドンドンキ」の店頭での販売が始まった。健康意識の高い消費者の需要取り込みを狙う。同国の食料自給率の向上に貢献することにも期待が寄せられている。
静岡県は先端農業推進事業「アグリオープンイノベーション(AOI)」プロジェクトの海外での取り組みの一環として、農業・食品関連の生産分野に関する意見交換や発表を行う「静岡・シンガポールアグリフードフォーラム(SSAFF)」を静岡、シンガポールで相互開催している。
同フォーラムをきっかけに、増田採種場(静岡県磐田市)と、垂直型の野菜工場を展開するシンガポールのサステニル(Sustenir)の提携が実現。両社初の共同プロジェクトとして、2020年に協業に向けた調整が始まった。増田採種場の種を使用し、サステニルのシンガポール工場で栽培したケールを販売する取り組みで、22年11月から現地のスーパー向けに出荷している。
増田採種場は日本で初めてケールの品種登録を行った種苗会社だ。日本初の事例として、生鮮葉物野菜で「機能性表示食品(GABA)」となる品種を開発した実績も持つ。
サステニルは、シンガポールの野菜工場で栽培したケールやホウレンソウなどの生鮮葉野菜をNTUCフェアプライスなどの地元大手スーパーに提供している。
特別仕様パッケージで販売
今回は新たに、総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)のアジア向けブランド「ドンドンドンキ」のシンガポール店舗での販売が始まった。
ドンドンドンキ向けのケールは1パック100㌘で、年間約1万2000パックを製造する予定だ。販売価格は税込み4.95シンガポールドル(約490円)。東部の「ドンドンドンキ・ジュエル・チャンギ・エアポート」店を除く各店舗で取り扱う。
パッケージはドンドンドンキ向けの特別仕様として静岡県のイメージキャラクター「ふじっぴー」のイラストを付け「静岡県産の種を使いシンガポールで栽培された野菜」という説明を記載(写真)。商品は地元スーパー向けと同じだが、すぐに食べられるように小さく刻んである点が異なる。
PPIHのグループ会社でドンドンドンキの店舗をシンガポールで運営するパン・パシフィック・リテール・マネジメント(PPM、シンガポール)の青果部門責任者、小西貴洋氏はNNAに対し「シンガポールは食料自給率が低く、食料の多くを海外からの輸入に頼っている。日本の品種の種を使用し(シンガポールで栽培した)日本品質のケールがあると聞き、興味を持ったことが販売のきっかけだ」と説明した。
収穫後すぐに鮮度の高い状態で店頭に並べることができるのがメリットだと指摘。少量タイプのため、頻繁に自炊しない人やケールを試してみたいという消費者に勧めたいと付け加えた。
静岡県東南アジア駐在員事務所の竹田敏彦所長は「ケールには多くの栄養素が含まれており、健康志向の高い現地消費者の需要にマッチする」と意気込みを語った。
静岡県は先端農業推進事業であるAOIプロジェクトを2015年に始動。革新的な栽培技術を開発して農業の生産性向上を図るとともに、産官学と金融機関による「産官学金」の連携を通じて農業関連ビジネスを展開する事業を推進している。
シンガポールでは政府機関やテマセク・ポリテクニック(国立技術高等専門学校)などの教育機関と連携し、農業・食品関連生産分野の共同研究や事業化を推進する取り組みとして静岡・シンガポールアグリフードフォーラムを実施。22年11月にはシンガポールで第3回フォーラムを開催した。
第4回は今年、静岡県内で実施する予定だ。静岡県は今後もこうした取り組みを通じて、シンガポールの食料自給率に寄与しながら県内企業の利益に資する動きを後押ししたい考えだ。(NNA 清水美雪)
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