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30年に1万店目指す  OMUSUBIブランドの百農社国際  NNA

2022.04.28

30年に1万店目指す  OMUSUBIブランドの百農社国際  NNAの写真

 香港で日本産のコメを使ったおむすび・総菜チェーン「華御結(はなむすび)」「OMUSUBI」を展開する百農社国際は今年、香港を飛び出して中国本土やアジアの国々へ進出する。2030年に全世界で1万店まで増やし、おむすびの国際化をけん引する意気込みだ。日本の農業を守りたいとの思いから始まったおむすび文化普及への取り組みは、創業から約10年を経て、日本米を海外へ広める大きな流れを生み出している。

 「本当にやりたかったことが、ようやくできはじめている」。百農社国際の西田宗生董事長は今、社名に込めた理念「百年先の農を創る」に新たな手応えを感じている。

 同社が華御結の1号店を新界地区・葵芳にオープンしたのは、東日本大震災から間もない11年6月。当時は日本産農産物に対する消費者の不信感が強かったが、華御結では安心安全の日本米を使うことにこだわり、10周年となった昨年、香港全域で100店舗を構えるに至った。

 その同社が今年1月、世界進出のための新ブランドとして立ち上げたのがOMUSUBIだ。1号店(写真:NNA撮影)は香港島・中環(セントラル)の商業施設「国際金融中心商場(IFCモール)」に開いた。

 OMUSUBIは華御結に比べ高級路線の商品ラインアップとなっているが、厳選した素材の中でも西田氏が特に自信を持っているのがコメ。「本当にやりたかったこと」がここに凝縮されている。

農家と一緒にコメ作り


 OMUSUBIの1号店で使用しているコメは、宮城県美里町産の「ひとめぼれ」。同社はこれまで商社経由で日本米を調達してきたが、さらに質の高いコメを消費者に提供するには「ゼロから生産者とつき合わなければならない」(西田氏、写真:NNA撮影)と考えた。農家と直接コミュニケーションを取りながら、2~3年の時間をかけて同社が本当に欲しいコメを作り上げたという。

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 生産者に求めたのは、安心安全のために農薬をできるだけ使わないこと、そして環境対応だ。コメ作りでは「一発肥料」などと呼ばれるプラスチック被覆肥料が使われることが多く、その残留物が川や海に流出することで環境への影響が懸念されている。

 「プラスチック被覆肥料を使わないでくださいと言っても、農家は限られた労働力の中で直ちにゼロにはできない。農薬もただ使わないだけでは食味に影響が出る可能性があり、品質を維持しながら使用量を下げることは難しい」と西田氏。生産者とは毎月ミーティングを重ね、意見をぶつけ合った。

 1年ごとに目標を設定して段階的に使用量を減らし、同時に水田からのメタンガス発生を抑えるため、田の水をいったん抜く作業「中干し」の期間も通常より延ばした。時間と手間を掛けたことで、ようやくプラスチック被覆肥料を使わず、新ブランドにふさわしい品質のコメを生産できるようになった。

世界の食文化とコラボ


 香港におむすび文化を定着させた同社だが、マーケティング手法はいたって地道だ。メディアなどは使わず、消費者との直接的なコミュニケーションに重点を置いている。

 華御結のレシートにはQRコードが付いており、読み込むと同社宛てにメッセージを送れる。消費者から寄せられる出店リクエスト、あるいは商品に関する意見を、店舗展開や商品開発に生かしてきた。

 これまでに開発したおむすびは300種類以上。「個人的に印象深い自信作はXO醤おむすび。日本では生まれない商品だと思う」。世界の食文化とコラボすることで無限に広がる可能性。その包容力が、おむすびの面白さだと西田氏は語る。

食のセーフティーネットに


 同社が2030年に1万店出店を実現した場合、玄米ベースのコメ使用量は年間14万㌧に達すると見込まれ、これは日本の主食用コメ生産量の2%に相当する規模だという。

 「1万店になっても日本米にこだわり、指定生産者と一緒になってコメを作る。そこは絶対に譲らない」と西田氏。使用量の大幅な拡大を見据え、既に数十軒に上る日本各地の農家と連絡を取っている。

 西田氏にとって、華御結の1号店で消費者から掛けられた言葉は、事業の大きな指針になっている。「安心安全な食べ物を毎日提供してくれる店は私の生活圏でここだけ。この店は私のセーフティーネットだ」

 海外への販路を提供することで、後継者不足に悩み、国内消費量の落ち込みに苦しむ日本のコメ農家を守りたいという原点。その思いが、結果的に海外の消費者の暮らしを守ることにもつながる。

 「農業、暮らし、食文化を次の世代に受け継いでいくことが自分のミッション」。西田氏はそう確信している。(NNA)

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