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EC構築や資金で農家支援  インドネシア・タニハブのCEOに聞く  NNA

2021.09.15

EC構築や資金で農家支援  インドネシア・タニハブのCEOに聞く  NNAの写真

 電子商取引(EC)を通じて農家と事業者・消費者を結びつけて農作物などの販売を行うアグリテック事業は、インドネシアで新型コロナウイルスの流行による買い物習慣の変化も後押しして急成長が続く。生産から販売、農家の資金調達までを網羅するプラットフォームを提供するタニハブグループ(写真:同社提供)は、人工知能(AI)を用いたシステムの向上など農業にさらなるデジタル技術の導入を進めている。最高経営責任者(CEO)のパミトラ・ウィネカ氏に、成長する事業と戦略についてメール取材で聞いた。

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(パミトラ・ウィネカ氏=同社提供)


 ー事業の現状は?

 タニハブグループは現在、農産物の電子商取引(EC)「タニハブ」、借り手と貸し手をインターネット上で結び付ける個人間融資P to P(ピア・ツー・ピア)プラットフォーム「タニファンド」、物流分野の「タニサプライ」の3領域の事業を手掛けている。農業の上流から下流まで一貫したエコシステムを発展させた点が、他の農業スタートアップとは異なる強みだ。

 インドネシアの特に小規模農家にとって市場・資金・情報へのアクセスというのは非常に限られており、収益を上げることが難しい状況にあった。これらの課題を解決するためにタニハブを2016年に立ち上げた。

 ECで販売チャンネルを提供することで農家が容易に市場へアクセスできるようにするだけでなく、資金面でも支援している。また、サプライチェーン(調達・供給網)のインフラを管理してパートナー農家の収穫量の管理なども進めている。

 タニハブでは、1100種の生鮮品、非生鮮食品のコメなどの生活必需品・食用油・香辛料など合わせて約2000種類の商品を取り扱う。売り上げの7割は法人向けの販売が占めており、残り3割が個人客向けだ。

 ー新型コロナウイルスの影響は?

 2年にわたる新型コロナウイルスの流行で、ますます多くの農家がオンラインを通じた販路の確保に関心を持つようになっている。これまで農家が作物を供給していた伝統市場や飲食店は、閉鎖や営業の制限を余儀なくされ、農家の収入源の減少も懸念されるためだ。タニハブではコロナ下でも、パートナー農家は増えており、現在はジャワ島、バリ島、スマトラ島、スラウェシ島で計4万6000軒の農家と連携している。

 消費者の買い物の習慣のデジタル化が一層進んだことも事実だ。タニハブのECはアプリでも利用できるが、現在およそ30万人のアプリ利用者がいる。コロナ下だけでも、このうち20万人がアプリ利用を開始するなど大きな影響があった。

 また政府もわれわれのような民間企業との協力に前向きであり、農業や中小企業関連団体との連携ができるよう支援してくれている。地方政府とも連携を深めており、地産地消の動きも活発化しつつある。

 ー7月に強化された活動制限の影響は?

 7月初旬に新型コロナ対策の活動制限が強化されてから約1カ月間でタニハブの取引量はこれまでの3倍近くにまで増加した。外出自粛で買い物に出かけることができない中、タニハブが消費者のニーズを満たす信頼できるサービスとなってきたことを表している。20年の売上高は前年比で約7倍となり、19年の成長率を大きく超えた。

 ー5月に調達した6950万㌦(約76億円)の使途は?

 タニハブグループは4年以上にわたり、農業の下流部門に足場を築いてきた。今後は農産物を栽培する新しいエリアの開拓や、加工および梱包センター・倉庫への投資を進める。上流部門への投資を強化して、インドネシア農業のバリューチェーンの可能性を最大限に活用したい。ジャワ島とバリ島の外でもサービスを提供する地域を拡大していきたい。

 技術開発も重要だ。AIに基づく需給予測システムの向上を進め、農家の作物の種類に応じた生産開始時期を計画できるようにして、価格変動を減らし、収穫物の供給を安定させる取り組みを進めたい。

 ー今後の課題や進出分野は?

 1つは効率的なサプライチェーンのための、インフラの構築だ。タニサプライで東ジャワ州マランに整備した加工梱包センターには、半自動の高速機械で農産物の種類やグレードを選別することができるようにするなど取り組んでいる。

 もう1つの大きな課題は、われわれが提供するテクノロジーを農家にうまく活用してもらうことだ。農家自身でデータの収集ができるように、生産データを入力するためのアプリを開発している。データの収集により、農家にとってより良い価格設定ができれば、付加価値を生み出すことができるとも考えている。

 インドネシア農業が直面する課題を当社グループが単独で解決することはできない。ほかのアグリテックと激しく競合するのではなく、今後も多くの関係者と協力を進めていきたい。


 タニハブグループ(TaniHub group): 2016年設立。本社は首都ジャカルタ。西ジャワ州チカラン、バンドン、中ジャワ州ソロ(スラカルタ)、東ジャワ州スラバヤ、バリ州デンパサールの5カ所に物流拠点、東ジャワ州マランに加工梱包センター1カ所を置く。タニファンドでは現在4000を超える農家や中小企業パートナーを持ち、17年以来の累計で3320億ルピア(約26億円)を融資した。

 <記者の目(和田純一=聞き手)>
 16年ごろから農業とITを融合したアグリテックのスタートアップ企業が台頭するインドネシア。タニハブでは昨年3万軒ほどだったパートナー農家が現在4万6000軒に増え、コロナ下の生活スタイルの変化も追い風に成長を続ける。小規模農家の所得格差という社会課題が原点になっているからこそ、生産・物流・販売・資金調達までトータルで解決する事業を展開する。国内にアグリテック企業がひしめく中で、さらなる社会的インパクトを高めていくことが期待される。(NNA)

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