戦火のがれきからよみがえった酒 沖縄、百年古酒の誓い 上野敏彦 記録作家
県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦。今年の5月15日は沖縄が日本に復帰して50年の節目ということで、メディアもさまざまな報道を繰り広げた。しかし、沖縄には全国の米軍施設の7割が今も集中するだけに、県民の間では本土の踏み台とされた戦時中の構図と何ら変わらないとの反発も強かった。 6月23日の慰霊の...
カフェー情緒が濃厚だったころ 版画「春の銀座夜景」に思う 植原綾香 近代食文...
仕事を終えて外にでると、蒸した空気に潮の香りが混ざっている。夏が来たと思う瞬間である。 共同通信のビルを背に電通ビルのほうへと抜けていくと汐留から銀座へ出られる。特別な用がなくても夜の銀座を歩いてから帰ると、1日の苦労がキラキラとした都会の光に溶けていく。 好きな版画家に小泉癸巳男(きしお)がいる...
「海のギャング」を唐揚げで 伊豆諸島・神津島のウツボ 小島愛之助 日本離島セ...
神津島は東京都伊豆諸島の有人離島としては最も西にある島である。周辺の島も含め数十個の流紋岩質単成火山があり、「神津島火山群」を形成している。島の形はひょうたん形をしており、シンボル的な存在である天上山(標高572㍍)を中心とした北部と、秩父山のある南部とに大きく分けられる。 天上山は838年に起き...
「山ごはん」の至福 長者原のとり天・だんご汁 眉村孝 作家
山ごはんが好きだ。 狭い意味での山ごはんとは「登山で山頂に到達したときに食べる食事のこと」だろうか。どんな山でも、頂上に着くころには空腹でおなかがなっている。頂上で食べる食事は普段より数割増しのおいしさを感じる。 「山で自炊してこそ山ごはん」と力説する人もいるだろう。私も山用の小型ガスバーナーとア...
ボルシチはおいしかったが... ウクライナでコメなし50日 水谷竹秀 ノンフ...
「郷に入っては郷に従え」ということわざがある。訪れた土地の文化や風習に従うべき、という意味だ。取材で海外に出る時、私は現地の料理を食べるのを鉄則にしてきた。だから日本料理店には目もくれない。 戦地のウクライナで取材をするため、日本をたった3月下旬時点でもそう決めていた。ポーランドを経由し、陸路で国...
平麺とこってりスープは変わらず 思い出のラーメン「赤のれん」 小川祥平 登山...
誰にでも「思い出の店」なるものがあるはずだ。親に連れられていった。友人と入り浸った。1人で何度も通ったー。そんな店は、味だけではなく、なにかの記憶と結びついている場合も多い。ぼくにとってのそれは「元祖赤のれん 節ちゃんラーメン」(福岡市中央区)である。 一番通ったのは中高時代。近くに友人の家があっ...
苦い方が効く? 商品増える青汁 畑中三応子 食文化研究家
青汁の愛飲層が広がっている。「体によいが苦くてまずい」「シニアが健康のために飲むもの」というイメージが強かったが、2017年にフルーツ青汁が大ヒットして以来、消費者の青汁に対する意識が変わった。おいしくて飲みやすい青汁が次々と開発され、パッケージがおしゃれになり、若い世代にも浸透しつつある。 青汁...
消えていく売り声 「土地を食う」駅弁150年 植原綾香 近代食文化研究家
「お茶ーエー、弁当いかが、ビール正宗いかが、東京・大阪の新聞でござーい」。今では耳にしない駅弁売りの声である。列車のスピード化、乗り換え時間の短縮、窓の開かない列車によりホームでの立ち売りの姿は歴史遺産となったが、かつてそれぞれの駅では地方色ある売り声が響いた。 駅構内で最初の販売許可願いが出され...
しっかり麺をアツアツで 長崎・五島の"地獄炊き" 小島愛之助 日本離島センタ...
皆さんは日本の三大うどんをご存じだろうか? 香川県の讃岐うどん、秋田県の稲庭うどん、とここまでは誰も異論がないところだろう。しかし3番目は?となると諸説があるようである。 長崎県の五島うどん、群馬県の水沢うどん、富山県の氷見うどんがそれである。ということで、今回は、「3番目」の候補の一つである五島...