明治の若者も牛肉大好き 畑中三応子 食文化研究家 連載「口福の源」
NHKの朝ドラ「らんまん」で、主人公の槙野万太郎は、うれしいことがあると仲間と牛鍋を食べに行く。 初めて行ったのは、1回目の上京時。牛肉自体が初体験で、同行の竹雄とグツグツ煮える牛鍋を緊張の面持ちで見つめ、こわごわ口に入れるや「うまいー」「甘くてたまらん」「口んなかで溶けた」と感激し、のけぞる様...
自作推し「カポナータ」 眉村孝 作家 連載「口福の源」
40歳を前にして初めて単身赴任が決まったとき、日々の生活についていくつか決心をした。そのうちの一つが「コンビニ弁当は食べまい」。ランニングやスポーツを続けてはいたが、記者を20年近く続けた身体は少しずつガタがきている。周りには、地方転勤で食生活を乱し、恐ろしく「成長」したり、体調を崩したりする人が...
長崎・鷹島にアジあり 小島愛之助 日本離島センター専務理事 連載「口福の源」
アジの水揚げ高日本一を誇る都市で、近年「アジフライの聖地」として売り出し中の長崎県松浦市は、伊万里湾に浮かぶ5つの有人離島(福島、鷹島、黒島、飛島、青島)を行政区域としている。今回は、このうち鷹島について紹介したい。 旧鷹島町の鷹島は2006年元日、松浦市・福島町と合併し松浦市となった。その後、...
繊維業とともに広がる? 奥が深いソースカツ丼 眉村孝 作家
昨年11月末。約11年ぶりに復旧したJR只見線に全線搭乗したあと、福島県の会津若松駅で列車を降り、とんかつ屋「かつ一」に向かった。目的はソースカツ丼。福岡や東京ではあまりお目にかからない。「ソースカツ丼はソウルフード」の声もある会津若松市へ着き、久しぶりに食べたくなったのだ。 待つこと十数分。出...
豚骨は久留米から日田へ 来々軒の歴史 小川祥平 登山専門誌「のぼろ」編集長
「ここの屋台は解散。今からはラーメンを広めていこう」 白濁豚骨ラーメンを生みだした屋台「三九」(福岡県久留米市)創業者の杉野勝見さんはそう宣言した。この言葉がなければ、豚骨ラーメンが九州各地に広がることはなかったかもしれない。 宣言した相手は屋台で一緒に働いていた叔父、田中始さん。杉野さんは言...
脂たっぷり肉厚の「黄金アジ」 巡り合った千葉・金谷産 眉村孝 作家
「ごめんね。今、終わっちゃったのよ」。11月半ばの平日の午後1時前。東京・八丁堀の路地にあるランチが評判の居酒屋を初めて訪れると、洗い物をしていた女性からこう告げられた。 人気の店だから仕方あるまい。踵を返し、近くでランチの店を探す。すると、同じ路地の奥にある「黄金アジフライ&ヒレカツ ¥950...
熊本に広がった豚骨 四ケ所日出光さんの功績 小川祥平 登山専門誌「のぼろ」編...
九州中に豚骨ラーメンを広めた立役者を挙げるならば、次の2人だろう。白濁豚骨を生み出した屋台「三九(さんきゅう)」(福岡県久留米市)創業者の杉野勝見さんと、その屋台を継いだ四ケ所日出光(しかしょ・ひでみつ)さんだ。 久留米を離れた杉野さんは北九州市で「来々軒」を開業。親戚にも味を教え、大分県日田市...
地域の「違い」楽しみたい 冬の食「おでん」「関東煮」 植原綾香 近代食文化研...
関東育ちの私にとって関西の食べ物は知らないことばかりだ。くるみ餅、ちょぼ焼き、ちりとり鍋など、これは何だろうと思うメニューを見つけると、どんなに便利になっても全国均一化されることのない食の差異に心が躍る。 そんな食いしん坊にとって、違いを楽しみたい冬の食におでんがある。おでんのルーツは諸説あるが...
日本海の新鮮な魚に満足 糸魚川「地魚料理すし活」 眉村孝 作家
引き戸をがらがらと開け「ごめんください」と声をかけた。見知らぬ土地、そして初めて訪れるすし屋。緊張で、声が少しうわずった。いちげんさんに、よそよそしい態度で接するすし屋は少なくない。だが、大将らしき男性から返ってきた「いらっしゃい」の声は、想像していたよりずっと温かみがあった。 新潟県糸魚川市に...