食べ物語

   

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カヌレ温故知新  畑中三応子 食文化研究家  連載「口福の源」の写真

カヌレ温故知新  畑中三応子 食文化研究家  連載「口福の源」

スイーツ界ではこの2、3年「カヌレ」人気が再燃している。 最初のブームは、1996年だった。90年代はティラミスを皮切りに、新種の菓子が現れては流行を繰り返した時代。東南アジア発祥のナタデココやタピオカも混じっていたため、〝洋菓子〟や〝ケーキ〟ではくくれなくなってしまった。そこで生まれたのが〝スイ...

甲州名物、ほうとうと富士  眉村孝 作家  連載「口福の源」の写真

甲州名物、ほうとうと富士  眉村孝 作家  連載「口福の源」

2月前半の3連休最終日の夕暮れ時。私と学生時代からの友人Tは、山梨県笛吹市の石和(いさわ)温泉街にある「甲州ほうとう小作(こさく)」ののれんをくぐった。 朝から寒風に当たりつつ、河口湖畔にある三ツ峠山(みつとうげやま)(標高1785メートル)を登ったため、体が芯から冷えている。時間が許すなら、温泉...

震災と釜石の居酒屋  眉村孝 作家  連載「口福の源」の写真

震災と釜石の居酒屋  眉村孝 作家  連載「口福の源」

「ごめんね。海がしけてるので、大したものがないのよ。それでもよいのなら」。JR釜石駅(岩手県釜石市)近くにある居酒屋「とんぼ」ののれんをくぐると、女将(おかみ)からカウンター越しに声をかけられた。9月8日午後8時過ぎのことだ。 その日は埼玉県内の自宅を早朝に出て、東北新幹線、JR八戸線と乗り継ぎ、...

八戸のヒラメに舌鼓」  眉村孝 作家  連載「口福の源」の写真

八戸のヒラメに舌鼓」  眉村孝 作家  連載「口福の源」

9月8日金曜日の9時43分。JR八戸線の普通列車が陸奥湊(むつみなと)駅に着くと、私は足早に改札口を出て「みなと食堂」をめざした。八戸港の近くで道には魚介や生鮮の店が並ぶ。物珍しげに見回していると、同じ列車に乗っていた女性2人組に抜かれた。うかうかしてはいられない。 食堂へ到着すると小さな店の中は...

川霧と温泉と田舎料理  眉村孝 作家  連載「口福の源」の写真

川霧と温泉と田舎料理  眉村孝 作家  連載「口福の源」

8月初めの夕暮れ時。私は福島県三島町、JR只見線が只見川を渡る第二只見川橋梁のそばで、橋や川面を眺めていた。 尾瀬ケ原を水源とする只見川は水量が豊かで、元々の流れは急だ。だが現在は発電を目的とした大小10以上のダムがある。三島町付近の只見川は、ダムが近いため湖のように穏やかで、木々や青い空、只見線...

明治の若者も牛肉大好き  畑中三応子 食文化研究家  連載「口福の源」の写真

明治の若者も牛肉大好き  畑中三応子 食文化研究家  連載「口福の源」

NHKの朝ドラ「らんまん」で、主人公の槙野万太郎は、うれしいことがあると仲間と牛鍋を食べに行く。 初めて行ったのは、1回目の上京時。牛肉自体が初体験で、同行の竹雄とグツグツ煮える牛鍋を緊張の面持ちで見つめ、こわごわ口に入れるや「うまいー」「甘くてたまらん」「口んなかで溶けた」と感激し、のけぞる様子...

自作推し「カポナータ」  眉村孝 作家  連載「口福の源」の写真

自作推し「カポナータ」  眉村孝 作家  連載「口福の源」

40歳を前にして初めて単身赴任が決まったとき、日々の生活についていくつか決心をした。そのうちの一つが「コンビニ弁当は食べまい」。ランニングやスポーツを続けてはいたが、記者を20年近く続けた身体は少しずつガタがきている。周りには、地方転勤で食生活を乱し、恐ろしく「成長」したり、体調を崩したりする人が...

長崎・鷹島にアジあり  小島愛之助 日本離島センター専務理事  連載「口福の源」の写真

長崎・鷹島にアジあり  小島愛之助 日本離島センター専務理事  連載「口福の源」

アジの水揚げ高日本一を誇る都市で、近年「アジフライの聖地」として売り出し中の長崎県松浦市は、伊万里湾に浮かぶ5つの有人離島(福島、鷹島、黒島、飛島、青島)を行政区域としている。今回は、このうち鷹島について紹介したい。 旧鷹島町の鷹島は2006年元日、松浦市・福島町と合併し松浦市となった。その後、0...

市場めしより「てっぺん」  眉村孝 作家  連載「口福の源」の写真

市場めしより「てっぺん」  眉村孝 作家  連載「口福の源」

6月初め、急な仕事で札幌へ出張した。宿を探していて見つけたのが、市民の台所「二条市場」に近いホテルだ。市場の場所は、札幌市中央区の大通公園の南東側。明治初期、石狩浜の漁師が川を上って札幌へ入り、鮮魚などを販売したことが始まりだという。 私には「市場での食事=市場めし」に惹(ひ)かれる傾向がある。初...