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「書評」 熊野孝文氏がコメ先物政策で寄稿  「日本農業の動き212」(農政ジャーナリストの会)

2021.12.07

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 日本農業の動き212号(東日本大震災10年 改めて「復興」を問う)に、農政ジャーナリストの会の会員である熊野孝文氏が「コメ先物本上場不認可の衝撃」を寄稿した。大阪堂島商品取引所が申請したコメ先物取引の本上場について、農林水産省が8月6日に不認可としたことを取り上げた。

 熊野氏はこの政策判断について、「驚天動地」「コメ政策が大きく後退」と批判する。同取引所は試験上場の延長を申請せず、コメ先物市場は来年6月に消滅する。熊野氏は「虚しい試験上場の10年」「価格変動のリスクを回避できる市場がなくなる」と強い懸念を示した。

 批判の矛先は、コメ先物市場の消滅そのものだけではなく、「行政判断の基準を変えた」と、農水省の不透明な手続きにも及ぶ。農水省はコメの現物市場の復活を検討しているが、「先物を消しておいて新たな現物市場を作るというのは政策の整合性を問われても答えようがない(中略)現物市場もまともな価格形成ができない」と悲観的だ。

 熊野氏は米穀新聞社の記者としてコメの流通を長年取材し、近著に「ブランド米開発競争-美味いコメ作りの舞台裏」(中央公論新社、2021年3月発行)があるスペシャリストだ。それだけに、抜群の説得力がある。

 日本農業の動き212号(東日本大震災10年 改めて『復興』を問う)は農村漁村文化協会発行、税込み1320円。

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