アグリサーチ

「研究紹介」 農業構造の変化と新たな連携への挑戦   農林金融2021年2月号から

2021.01.30

 農林水産省は昨年、5年に1度まとめる極めて重要な文書を2つ公表した。3月発表の「食料・農業・農村基本計画」と11月の「農林業センサス」(概数値)だ。両者は政策とデータという表裏一体の関係にあり、農業の現状と課題、今後の姿を理解するためには有用な存在だ。

 株式会社農林中金総合研究所の「農林金融」2月号が収録した2本の論文は、農水省の2つの発表を分析し、分かりやすく解説している。


 農林中金総合研究所の石田一喜・主事研究員による「人手不足に直面する地域の「受援力」向上を目指して―2020年基本計画における農村政策を踏まえて―」は、基本計画が「車の両輪」と位置付ける産業政策と地域政策のうち、特に後者に着目し、地域づくりのためには「受援力の向上が求められる」と強調している。

 「受援力」とは聞き慣れないが、「地域においてボランティア等の人を受け入れる際の環境・知恵の総称」と定義され、防災分野で使われ始めたそうだ。都市から農村への人の移動は、「移住・定住」か「観光」の両極端である傾向が強いが、新規就農が前提ではハードルが高すぎる。

 著者は「地域起こし協力隊」や「半農半X」、「二地域居住」などの「関係人口」に可能性をみる。都市と農との関わりは多様化しており、「受援力」の向上のためには、地域の何が課題で、どのような人手が必要かを明確にし、それを発信する体制を整えるべきだと指摘する。実践面まで踏み込んだ本論文の行間からは、農地の維持が急速に困難になっている現状に対する、著者の焦燥感を感じる。

論文「人手不足に直面する地域の「受援力」向上を目指して2020年基本計画における農村政策を踏まえて―」

 

 同研究所の内田多喜生常務取締役による「2020年農林業センサスにみる農業構造・農業集落の変化」は、この数年の急速な農林業の構造変化を分かりやすく解説している。

 特に北海道を除く都府県の条件が不利な地域では、稲・畑作など土地利用型農業で急激な変化が起きている。高齢化による小規模な稲作経営の縮小や離農に伴い、個人経営体が激減する一方、法人経営体が増加して耕作地の集積も進んでいる。しかし、全体では耕地面積の減少を補い切れない。

 急速な構造変化により、集落機能の持続性に不安が残るが、環境保全や集落行事など地域資源を維持する上で、グリーン・ツーリズムのように都市住民が関わり、民間非営利団体(NPO)、学校、企業などと連携する傾向も出ている。統計の数字の海から「多様な関わりの重要性」を巧みに浮かび上がらせている。


論文「2020年農林業センサスにみる農業構造・農業集落の変化」

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        農林金融2021年2月号(農林中金総合研究所)