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ラム肉人気で生徒増える   最北端の農業高  「地域再生への助走」AFCフォーラム 2020年11月号から

2020.11.12

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 農業高校としては日本最北にある北海道立遠別農業高等学校は、サフォーク種羊の飼育やラム肉の加工が学べることから、新入生が増加している。

 独自の飼料を開発するなど、敷地内の羊舎棟で生徒が力を合わせて飼育している様子や地元とのつながりを、同校の石川ウーリーエル教諭が、日本政策金融公庫の月刊誌「AFCフォーラム」の 202011月号「地域再生への助走」で報告した。

 同校は14年に食肉処理業・販売業の資格を取得、羊肉の加工など6次産業化も学習できる。ソーセージなどの加工品は、ふるさと納税の返礼品にも採用され、町内のイベントや校内のアンテナショップ「遠農(えんのう)高マルシェ」で生徒自ら販売、地元や近隣からの来客が開店前から行列するほどの人気だという。

 羊の生産・販売を通じて生徒たちは地域とのつながりを深めている。全校生徒数(生産科学科の単科)は、一時は定員割れが続き45人まで減少したが、18年から新入生が増加に転じ、生徒数も67人に回復した。

 村上春樹の小説にもしばしば登場する北海道のめん羊だが、国内の飼育頭数はピークの約94万頭(1957年)から約1.9万頭に激減し、羊肉の自給率は0.6%しかない。しかし羊肉の生産・販売の担い手が育ってくれば、やがて飼育頭数も増えてくるだろう。長い目でみると、土木事業や施設の建設よりも、教育こそが確実に地域を再生できる投資だと実感できるレポートだ。