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「地域の担い手」へ活躍期待  増える外国人居住  沼尾波子 東洋大学教授

2021.11.01

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「地域の担い手」へ活躍期待  増える外国人居住  沼尾波子 東洋大学教授の写真

 日本で暮らす外国人は約289万人(2020年末、入国管理庁統計)。2000年の170万人から100万人以上も増加した。感染症の影響で昨年は多少減少しているが、人口の約2.3%を占める。

 割合では少なく思えるが、外国籍人口を経済協力開発機構(OECD)加盟33カ国で比較すると、日本はアメリカ、ドイツ、イギリス、イタリア、スペイン、フランスに次いで7番目である。日本は数多くの外国人を受け入れている国ともいえる。

 人口減少が進む日本において、今後労働力の確保は社会経済の維持にとって大きな課題である。

 2018年の入管法改正により、政府は新たに特定技能という在留資格を創出し、人材不足が指摘される14分野で海外からの労働力を受け入れる制度を整えた。新型コロナウイルス感染症拡大により、国境を越えた人の移動は制限されているが、近い将来、より多くの外国人が日本で働き、生活すると考えられる。

 外国籍の人々が居住する地域や在留資格はさまざまである。住民基本台帳人口により、外国人住民が居住する自治体をみると、全体の7割弱が三大都市圏で、国籍や在留資格も多岐にわたる。東京都内で最も外国人住民の多い新宿区には126の国と地域の人々が居住する。

 これに対し、外国人住民比率の高い地域は、全国各地に散らばる。外国人住民比率が人口の7.5%を超える全国上位20自治体(行政区)の特徴をみると、第1に大阪市生野区や横浜市中区など、戦前からのオールドカマーと呼ばれる韓国および朝鮮籍、中国籍の方が多く暮らす地域、第2に群馬県大泉町など、自動車や精密機械をはじめとする製造業などで働く人々が多く暮らす地域、第3に北海道占冠村などスキーやスノーリゾートなどの観光地(感染症の影響で最近は減少傾向)、第4に群馬県南牧村など農業分野の技能実習生が多く暮らす地域が上がった。

 地方創生戦略の一つに多文化共生を掲げる自治体もある。人口減少が進む地域で、積極的に外国籍の人々を受け入れ、地域の担い手として活躍を期待する取り組みが推進されている。

 北海道東川町では、公設で日本語学校を開校し、修了後には福祉人材としてさらなる学びの場を用意する。外国人に地域の担い手として活躍してもらうための人材育成と、交流の場が創出され、人口増に結びついた。

 政府は、外国人の受け入れについて、労働力としての期待は持ちつつも、移民の受け入れには消極的な姿勢を取ってきた。

 しかしながら、1人の人間が地域で暮らし、働くとき、労働力だけを切り取ることはできない。多様な文化や風習を持つ人々との間で、相互に理解し合える関係構築に向けて、今後ますます対話を重ねる取り組みが求められるに違いない。

(Kyodo Weekly・政経週報 2021年10月18日号掲載)

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