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ごみ拾い・雪かきを楽しむ方法  沼尾波子 東洋大学教授

2020.12.21

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ごみ拾い・雪かきを楽しむ方法  沼尾波子 東洋大学教授の写真

 人口減少、高齢化の進展とともに、地域の草取りやごみ拾い、雪かきなどの活動の担い手不足が各地で課題となっている。街なかであれば行政がごみ収集や除雪などを行うこともある。だが、自治会などで作業してきた地域では、シルバー人材センターに委託する動きも出てきた。

 これに対し、最近、除雪や地域清掃などの活動を、若い人たちが楽しみながら担う動きが起こっている。

 一つがスポゴミである。これは、団体などが取り組む従来型のごみ拾い活動に、スポーツの要素を加え、これまでの社会奉仕活動を「競技」へと変換させたものである。あらかじめ定められたエリアで、制限時間内に、チームワークでごみを拾い、ごみの量と質でポイントを競い合う「スポーツ」だという。

 島根県海士町では、海岸に漂着したり打ち捨てられたりしたごみの問題に対し、大学生がスポゴミの導入を提案し、ブータンからの研修生と共に実施したところ、大好評だったという。

 人々が見向きもしなかったはずのごみが、どんどん楽しみながら集められていく。嫌なはずのごみ拾いが楽しい。そのことに驚きながら、この仕組みをブータンでも取り入れたいとして、研修生は帰国したという。

 もう一つが除雪。除雪の技を磨きながら、地域で活動する動きが各地で起こっている。

 例えば青森県つがる市では、雪かき検定、雪かき道場などが開催され、除雪の技を習得しながら、皆で雪かきに取り組む。

 一方、福島県西会津町では除雪をエクササイズと捉えて、取り組む活動が起こった。その名もジョセササイズ。除雪を「人を幸せにできる、初めてのエクササイズ」とうたう。雪国の日常生活の苦痛を楽しみに変え、西会津町や会津地方さらには雪国に訪れてもらうきっかけを提供する活動として展開する。

 早朝から除雪をするのは孤独で辛い作業になりがちだ。だが、SNSでジョセササイズとして除雪を行う様子を写真や動画でシェアし、他の地域で除雪をしている人たちとつながることで、励まし合いながら除雪に取り組めるという。

 日本ジョセササイズ協会のサイトでは、エクササイズとしての除雪時の体の使い方や、安全な除雪作業について説明のほか、ジョセササイズカウンターでカロリー計算や、除雪量に応じてキャラクター育成が行えるページも用意。目標設定や参加を通じて、日常の作業を楽しいものに変えていく取り組みは挑戦的だ。(イラスト:同サイトから。サイトは小堀晴野さんによる楽しいイラストを多数掲載している)

 フランスの社会学者カイヨワはその著書「遊びと人間」で、遊びの概念を①自由な活動、②隔離された活動(決められた時間と空間の中で行われる)、③未確定な活動(先に結果は分かっていない)、④非生産的活動(富を生まない)、⑤規則のある活動、⑥虚構の活動(非現実であるという特殊な意識をつくる)と規定した。

 これらの要素を取り入れることで、日常の労働を楽しみに変えて暮らしを愛しむ。そんな工夫とともに、地域で新たなつながりが生まれている。

(Kyodo Weekly・政経週報 2020年12月7日号掲載)

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